知人に勧誘されて、ある音楽会に顔を出してきた。好楽者が集まって各自得意の演奏を聴き合うのだと教えられたが、具体的には見当のつかないまま参加した。とある邸宅の応接室にグランドピアノと電子ピアノが置かれていて、約20名の人が入ると結構満室感があった。
黒板に本日のプログラムの如く演奏順が書き出されていて、当方は最後から2番目に入っていた。曲目は決めていなかったので名前だけ書かれていた。主宰者たる女主人さんはピアノの先生だそうだ。彼女の人的交流の中から、自由な雰囲気で音楽を月一回楽しむ会ができたらしい。
出し物は多彩で、ファゴット、ヴァイオリン、チェロ、ピアノ、オカリナ、声楽に加えて、ヴァイオリン演歌まであった。当方を誘った知人は、この会の常連だとばかり思っていたら、何と彼も初参加だと判り、驚いた。どこにでも直ぐに溶け込む特技を有するらしい。
演奏のレベルは様々だが、皆さんリラックスして楽しんでいらっしゃり、心地よい雰囲気であった。ヴァイオリン演歌士は、さすが大道芸だけあって、大変に賑やかであった。聴衆も巻き込んで、支給品のお捻りを投げさせたり、皆さん勝手に唱和したりして盛り上がった。そのドサクサに紛れて当方は病み上がりの喉の調子を確認した。
ピアノの先生の独奏の後に当方が歌ったのは、«Берёзка ビェリョースカ»(原義はシラカバ。邦題は「春に」)で、立春の今日に合わせた積りであったが、別に何方も感心した様子は無かった。もともと十年以上も前に合唱団でアルトパートを歌っていた曲で、主旋律を歌うのは初めてであったが、何とか無難にこなしたと思う。出だしのリズム取りには苦労し、昼ごろに漸くコツを掴んだ。
よくよく見ると、十数年前に使っていた楽譜は、ロシア語歌詞の譜割り(言葉割り?)がいい加減であった。そんな楽譜で皆さん歌っていたのも不思議なことだが、恐らく耳から覚えるのが普通だったのだろう。