またまた日経新聞からネタを頂く:
万葉集を楽しむ 超絶技巧の言葉遊び小島ゆかり
2017/1/8付日本経済新聞 朝刊 p.20
新年には、かならずこの歌を思い出す。
新(あらた)しき年の初めの初春(はつはる)の
今日(けふ)降る雪のいやしけ吉(よ)事(ごと) 大伴家持
『万葉集』全20巻4516首の、最後を飾る歌である。天平宝字3年(759年)正月一日、因幡(現在の鳥取県)の国庁において、国守であった家持が、年頭の挨拶として詠んだ一首。
「新しい年の初めの初春、今日この日に降る雪の、いよいよ積もりに積もれ、佳き事よ」。天…
(以下、有料)
上記引用された和歌は、当方も昔から馴染みの有名なものである。これは小島氏も格調高く切り出すために利用したものと思われる。本論の≪超絶技巧の言葉遊び≫は、現代の感覚では些か物議をかもしそうな、しかし、見事な和歌たちの紹介ないし手がかり提供である。
当方も初めて読む≪万葉集巻16長忌寸意吉麻呂(ながのいみきおきまろ)≫の歌のうち数首を掲記しておこう(参照したサイトからのコピペ):
3824: さし鍋に湯沸かせ子ども櫟津の桧橋より来む狐に浴むさむ
小島氏が≪超絶技巧≫の例として引用している歌である。訓読に悩むところはあるものの、全体としての解釈はさほど難しくはない。“来む”も、この歌の中の超絶技巧の一つで、狐の鳴き声との掛詞になっているとのことだ。
手掛かりだけ提示して、読者の探索に委ねた歌と思われるのは、例えば次のようなものである:
3828: 香塗れる 塔にな寄りそ 川隈の 屎鮒食める いたき女奴
字面から大意は汲み取れる。しかし、≪いたき女奴≫は、現代では袋叩きにあう、受け入れられない表現だろう。小島氏も引用しなかった所以だ。
詠白鷺啄木飛謌標訓 白鷺の木を啄(くは)ひて飛ぶを詠める歌
3831: 池(いけ)神(がみ)の力士(りきし)舞(まひ)かも白鷺の桙(ほこ)啄(く)ひ持ちて飛び渡るらむ
(原文: 池神力土舞可母白鷺乃桙啄持而飛渡良武)
超絶技巧といえば音楽用語としか意識しなかったものだが、他の芸術その他あらゆる分野にあり得ることは確かだ。良い刺激になった。