国立科学博物館のPR誌『自然と科学の情報誌 milsil』はカラフルな図解や写真が満載で、当方お気に入りの雑誌の一つだ。最新号2016年11月(第54)号は【特集 匂い】のほか、≪旅する生き物―地球をめぐる命― 第9回 カエルツボカビ 日本起源のカビ?!その不思議な「旅」≫など飽きさせない内容だ。
巻頭記事≪サイエンス・インタビュー 科学のいま、そして未来 ニュートリノの性質から消えた反物質の謎を解く!≫もワクワクさせてくれる。素粒子論の本質は不可解だが、比喩的な解説は当然ながら頭に入り易い。
例えば、古典的な原子構造説で、
“原子は中心部分に原子核があり、その周りを沢山の電子が回っている。原子核には原子の重さのほとんどが集中しているが、大きさは原子の10万分の1ほどしかない。原子の大きさを東京ドームとすると、原子核はパチンコ玉ぐらいで、素粒子のレベルでみると、原子はとてもスカスカなものになる。”
解り易いだけに、素人頭にも引っ掛かる可能性が高まる。“沢山の電子が回っている”と言うが、水素原子では電子1個ではないか。ヘリウムでは2個。炭素、窒素、酸素など身近な元素では1ケタ止まりだ。鉄など金属では“沢山の電子が回っている”という表現がピッタリだ。
数字マニアは、“大きさ”は原子の10万分の1ほどしかないと言われて、“長さ”の次元(直径)では「1/10万の3乗根」ほどだと受け止めた。そうすると、“原子の大きさを東京ドームとすると、原子核はパチンコ玉ぐらい”との比喩が眉唾モノになる。
しかし、国立科学博物館がそのようなミスを犯すはずはない、と暫し沈思黙考して、気が付いた。“大きさ”とは“長さ”の次元のつもりなのだ。確認してみると、パチンコ玉は直径11mm、東京ドームは直径244mだそうで、2万2千分の1の比率となる。解説の“10万分の1”とはかなり違うが、ドームの直径を何処で測るかによって変わるのだから、この程度の差はよしとしよう。