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Channel: 愛唱会きらくジャーナル
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誰がために鐘は鳴る ~ 欧米の教養 ~ われアルカディアにもありき

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池澤夏樹氏が「誰がために鐘は鳴る」という言葉の説明をしている(ジョン・ダンの恋と信仰 『図書』2016.12, pp.60-63)。ヘミングウェイの長編のタイトルで有名になったが、ジョン・ダンの「不意に発生する事態に関する瞑想」という詩の一節だとのことである:
 
≪すべての人はつながっている。だから弔鐘を聞いても人をやって誰の葬式の鐘かと聞いてはいけない。それはお前のための鐘なのだ。≫
 
話題は一転して、ヨーロッパの格言“memento mori”に変わり、「死を忘れるな」から「生きているうちに楽しめ」まで幅広い意味に使われたことを述べる。この語を頭蓋骨に彫って飾ることが近世流行したと言う。
 
更に転じて、“et in Arcadia ego”すなわち「我もかつてはアルカディアにありき」を頭蓋骨に彫って飾る趣味もあったことに言及する。「今は骨となったが、生きていた頃には楽園にいたのだ」ということだが、これにも別の解釈があり、死神が「楽園にだって私はいるぞ」と言っている意味だとも。
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何の脈絡もないが、佐藤康宏氏が「われアルカディアにもありき」と題した一文を書いている(『UPDecember 2016)。佐藤氏はこの言葉について何も説明せず、ご自身がかつて属していた美術史学研究室について語るのみである。アルカディアは好ましい環境の意味に使われている。
 
et in Arcadia ego”は、日本でも知識人、学者の間ではよく知られた常套句なのか。
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