某高校の数学の先生が、余興で生徒にこんな問題を出した:
≪縦横60メートルの正方形の土地に木を10本植えるとき、どれか2本の木の中心間隔は必ず29メートル未満になることを説明せよ≫
“説明せよ”とは、厳密な証明までは求めないという、寛大なお気持ちの現れだろう。そこで、当方も挑戦してみた。
この手の問題は、全体が整然とした等方的状態(言わば対称性)を想定すると解き易いと直感が教える。ただ、10本という数が曲者だ。そのままでは、等方性のある並べ方が出来ない。そこで、一歩後退して、9本の場合を考えてみる。問題の性質上、木の間隔を出来るだけ大きく取る配置を考えればよい。つまり、最小値の最大値を考察すればよい。
直感的に、四隅と各辺の中点と対角線の交点(つまり中心)を選択すれば望に叶うと判る。最小間隔は、30メートルである。その状態から、どれか1本をどの方向であれ、動かせば、他のどれか1本との間隔が、もとの最小間隔30メートルよりも狭まる。つまり、最小間隔を30メートルより大きくすることは出来ない。
そこへ木を1本割り込ませることを考える。等方性を尊重するならば、正方形の中心に着目しなければならない。中心にある1本を2本に置き換え、その間隔を大きく取ることを考える。対角線上で動かして、隅点を含む4点を等間隔にすればよいと判る。つまり対角線を三等分する2点に植えればよいという結論になる。
対角線上の点は、最寄りの辺中点との距離が、中心にある時に30メートルで最大であり、中心と隅点との中点にある時に30メートル÷√2=21.2メートルで最小である。
前者の場合、2植樹点間の距離は21.2メートル以下となる組が必ずある。また、対角線の三分の一の長さは、60x√2÷3=28.28・・・メートルで、29メートル未満である。最小間隔をこれ以上大きくする配置は無い。
以上、等方性の要請に基づく直感的説明であるが、説得力はどうだろうか。あまり厳密な論法ではないな。もっとスマートな説明法がありそうな気がする。それこそ直感。