「東北温泉風土記」という些か古い本がある。石坂洋二郎 編/勝平得之 画、社団法人日本旅行協会(ジャパン・ツーリスト・ビューロー)昭和15年4月28日発行、B6判、約130頁である。(サイト http://blog.zaq.ne.jp/RYZOWIEC/daily/201202/06 に、きれいな画像が掲載されている。)
内容は、
馬橇に乘つて(民謠)…白鳥省吾
東北の溫泉…石坂洋次
東北地方主要溫泉案内
東北溫泉の記…藤浪剛一
湯文…藤浪剛一
コケスンボコ雜考…三原良吉
こけしの溫泉を巡る…天江富彌
東北溫泉一覽表
東北地方主要溫泉案内 などである。
冒頭の「馬橇に乘つて(民謠)」は白鳥省吾の創作らしいが、「東北地方主要溫泉案内」の随所に引用されている各土地の民謡、わらべ歌などが面白い。
村山地方 手毬唄
おまんさ おまんさ 髪結ひ上手で 今朝結った髪をぱらりと解いて
おやぢの代のたかつぽはづし 売るにも五貫買ふにも五貫
五貫の金を七つに割って 七橋かけて渡ると仰言る
猫も渡る いたちも渡る 十六七の 女も渡る
~
“津軽 山形温泉 青森県南津軽郡山形村”という項目が目に付いた。北海道に広島があったり、福島に石川があったりするのと同じことで、驚くほどのことも無いが、地図などで確認した。
山形村は今は無い:
“山形温泉”もネット検索ではヒットしない。本書の記述でも、“温湯、落合、板留の温泉の総称”であるとしている。
「山形公民館」の施設があって、その所在地は“青森県黒石市大字温湯字派15番1”となっている。“温湯”は“ぬるゆ”と読むのだろうか。字(あざ)の“派”は“は”としか読めないが?
勝平得之の版画が沢山挿入されていて、ほのぼのとした温かみを醸す。この本、結構売れたようで、古書マーケットに多く出回っている。石坂の主要な作品ではないが、販売部数では上位に来るのかも知れない。