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Channel: 愛唱会きらくジャーナル
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バイカル湖 ~ 336:1 ~ アンガラ川

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「バイカル湖のほとり」というロシア民謡、和訳歌詞“豊かなる ザ・バイカルの ~”で知られる。当方は、合唱趣味の世界に足を踏み入れて間もなく、ロシア語原詩で覚えさせられた。今でも一番だけはスラスラと歌える:
 
По диким степям Забайкалья, Где золото роют в горах, 
 Бродяга, судьбупроклиная, Тащился с сумой на плечах.
 
タイトルのバイカル湖自体とても有名な湖であり、旅行記の類いも多い。昨日の日経夕刊に沼野恭子氏(ロシア文学者)が随筆≪バイカル湖の伝説≫を寄せている:
 
 ~ バイカル湖には古(いにしえ)より伝わるこんな伝説がある。厳しい老父バイカルに三三六人の息子とアンガラという一人娘がいた。父の監視のもとで窮屈な思いをしていたアンガラはエニセイに恋をして父のもとから逃れ、怒った父は岩を投げつけたが、阻むことができなかったという。実際、バイカル湖には数百という川が流れ込んでいるが、一本だけ流れ出てエニセイ川と合流している川がある。それがアンガラ川だ。バイカルが投げたという岩も「シャーマンの岩」として観光名所になっている。~≫
 
こんな伝説があるとはついぞ聞いたことが無い。合唱バカと言ったところか。湖に出入りする河川の実況に合わせた巧みな伝説に感心する。中でも、“三三六人の息子”すなわち“流入336河川”に興味が湧いた。
 
数字マニアにとって、“336”は如何にも意味ありげに見える。例えば、336=6x7x8である。実数に拘らずに選定した数字だろうかと思われた。沼野氏も“数百という川が流れ込んでいる”と仰る。一応ネット検索で確認することにした。
 
日本語ウィキペディアを参照すると、なんと≪セレンガ川バルグジン川上アンガラ川など336本の河川が流入するが[14]、流出する河川は南西端に近いアンガラ川のみ≫とある。典拠まで明示されている。それは日本の某大学の報告書であるが、特に河川の数を調査した報告ではなく、何かを引用したものと思われた。
 
そこで、英語Wikipedia を参照した。そこには≪The lake is fed by as many as   330 inflowing rivers.[4] Themain ones draining directly into Baikal
the Turka River,the SarmaRiver, and the Snezhnaya River. It is drained    
  through a singleoutlet, the Angara River.≫とあった。つまり、330もの流入河川があるとしている。
 
念のためロシア語版を参照した:≪Поданным исследований И. Д. Черского (XIX век) вБайкал впадало 336реки ручьёв, и это число учитывало
только постоянные притоки[4].Более современных данных по данному
вопросу нет, однако иногда приводятся цифрыв 544или 1123 (которые приведены в результате подсчёта распадков, а не постоянных
 водотоков). ~≫
 
機械翻訳を参考にすると、自然の永久河川はやはり336あり、他に、季節的あるいは人工的な水路などを算入すると、544から1123という数字が出るらしい(多分)。
 
とにかく、336は一応権威ある数字と見てよいようだ。数字マニア好みの何か意味の隠された数字ではなかった。このことからすると、この伝説の起源は案外新しいのではないかと推察される。あるいは、古い伝説に、数字が後から付加されたのかも知れない。
 
随筆の主題は、劇作家アレクサンドル・ヴァンピーロフ(一九三七~七二)に関わる思い出である。

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