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黄金比 ~ 慣用表現 ~ フィボナッチ数列

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日本経済新聞の2016/10/29付夕刊(p.4)のコラムイメージ 1は「自然と芸術」(橋本麻里)であった。タイトルに惹かれて読み進んだが、途中で引っ掛かった。例えば: 

 
「線分を一点で分けるとき、長い部分と短い部分との比が、全体と長い部分との比に等しいような比率。1対1.618をいう。古代ギリシアでの発見以来、人間にとって最も安定し、美しい比率とされ、美術的要素の一つとされる」(小学館『大辞泉』)黄金比。
 

これは辞典からの引用である。普通、ABとの比と言えば、記号ではAB と書き表される。この習慣に従えば、上記引用文中、≪長い部分と短い部分との比≫は≪1対1.618≫ではなく≪1.618対1≫となるはずである。尤も、黄金比は通常、近似値で11.618 のように表わされるから、文中≪長い部分と短い部分≫の順序を入れ替える方が善いかも知れない。

 
続いて、≪黄金比の連続によるフィボナッチ数列≫という記述がある。これは松本氏自身の言葉である。
 
「フィボナッチ数列」とは、≪最初の二項が1で、第三項以降の項がすべて直前の二項の和になっている数列。すなわち、1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89…という数列≫である(デジタル大辞泉)。
 
これが≪黄金比の連続≫と言えるのだろうか。厳密に言えば、数列の後ろに行くほど、隣り合う項の比が黄金比に近くなるので、長い数列として見れば、(初めの方の部分を除き)ほぼ黄金比の連続によるフィボナッチ数列≫とは言える。そんなことは常識だからいちいち断らなかったということかも知れない。
 
肝腎のコラムの論旨は、≪芸術と自然科学とは距離の離れた分野だと見なされがちだが、それらは時に近づき、時に離れ、互いに影響しあいながら、それぞれの領域をより豊饒(ほうじょう)なものに育ててきた≫と、眞に同感である。イメージ 2
 
芸術家も科学者も、互いの分野に理解を深めることが肝要だ。

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