エイズが人類を滅ぼすのではないかなどと騒がれていた三十年ほど前、医学雑誌に開業医(だったと思う)の投稿があった―――エイズなぞ恐るるに足らず、飲尿で治る、と。根拠は、患者の体内に出来た抗体が尿と共に排出されるので、これを飲めば病原体を制圧できるという理論だった。
実際に先の大戦中、医薬品の無くなった前線で、軍医は患者自身の尿を飲ませて回復させた事例があるとも書かれていた。ほら話か、実話か、確かめようも無いが、一応理屈にはなっている。飲尿が感染症の万能療法となってもおかしくない理屈だ。
しかし、飲尿療法が医学的なお墨付きを得たという情報は無いから、やはり迷信に過ぎないのだろう。
ところが、一年ほど前に、こんな報道があったらしい:
≪ふん便が薬に、新治療「ふん便移植」が脚光 9割で症状改善
CNN.co.jp 2015.10.12 Monposted at 17:33 JST
~便を透明なプラスチック袋に入れ、生理食塩水を追加。「ジャンボミックス」と呼ばれる機器の中で2分間、袋をかき混ぜると、便内の繊維が除去され、善玉菌で満ちた液体が残った。
~ピペットを使い、この液体を250ミリのペットボトルに移し替えた。平均的には1回に提供する便でペットボトル4本分になるのだが、この日は7本に。ペットボトル1本が治療液1本の量に相当する。○○さんの便から作られた治療液133本は、2度目の健康診断を通過するまで、巨大な冷凍庫の中に隔離保存されている。~≫
見出しだけでは、イカサマの飲尿療法に類するものかと思われるが、本文を読めば、糞便そのものを摂取するのではなく、そのなかの善玉菌を取り出して利用するのだと判る。これなら科学的根拠が明らかであり、実用化されているのも頷ける。