たかが童謡と侮ってはいけないことを思い知らされた別の一件:
うさぎ (文部省唱歌)
うさぎ、うさぎ、なに見(み)て はねる。十五夜 ( じゅうごや ) お月 ( つき )さま、見 ( み )て はねる。
ン十年も前から頭に沁み込んだ詞・曲と認識していたが、ピアノの前奏から歌いだしの音が取れなかった。数回繰り返しても埒が明かない。不思議と言うか、前奏がおかしいのではないかとの疑いを抱いてピアニスト先生に“音が取れない”と正直に申告した。
先生は、出来の悪い生徒に丁寧に教えてくれた。鍵盤を叩きながら“前奏の最後の音がこれで、歌い出しはこれ”と実際の音を聴かせてくれたところで、やっと不出来の原因が判った。覚えていた出だしの音が正しい音に比べて半音低かったのだ。
正しくは、ファーファラシラシーと上がっていくところ、当方はミーミラシラシーと覚えていたのだ。皆で歌っている時にも違和感はあったのだが、誤信は想定外であった。それにしても、こんな単純な間違いを自力で是正できなかったのは情けない。体も頭も硬直化路線をひた走るか。とは言え、前奏も実際には凝った作りであるから、不出来の原因の半分はその所為だったかもしれない。
今夜は満月。拝めるかな、と窓の外を見上げれば、薄雲を透かして朧月。