ニュートンのリンゴの木、メンデルのブドウの木、ルターのリンゴの木など、人名を冠した○○の木は世の中にどれほどあるのか。この度、≪シーボルトの藤の木≫というタイトルのエッセーを読んだ(NU7 2016.09, No.7):≪シーボルトの藤の木~長崎へ戻った私の“洋学事始”~ 久保正彰(東京大学名誉教授/前日本学士院長/前学士会理事長)≫
九州大学の会場での2016年3月12日の講演会(の要約?)と注記されている。内容の九割方は西洋古典学の碩学がブリュッセルの古書展で購入した高価なギリシャ語の『ホメロス全集』にまつわる古典探索譚で、素人でも引き込まれる興味深い“洋学事始”である。
大タイトルの≪シーボルトの藤の木≫は、十数年に亘る探索の旅の結果的に終着点となるオランダ・レイデン(一般にはライデンと表記する)大学のシーボルト植物園に咲き誇る藤の木との邂逅に因むものである。
久保氏はその紫白の藤を見て、既視感に捉われ、突然、「高松の実家の庭に咲いていた藤と同じだ」と古い記憶が鮮明に甦ったと言う。その植物園の藤は「日本の藤」と呼ばれており、一方、実家の藤は「オランダの藤」と呼ばれているので、不思議な因縁に驚いた由。
この件の途中を端折って、オチだけを記せば次の通り: