「カチューシャ」と共に所謂ロシア民謡の代名詞の如く有名な「トロイカ」に複数の同名異曲の存する事情について、“らすぺふ”(http://www.nana.or.jp/~k-matsu/)主宰・松本明子さんが簡潔にまとめている。
それによると、例えば、次の4種類の通称で知られる「トロイカ」がある:
「ヴォルガのトロイカ」 “雪の白樺並木~”の歌詞でポピュラー
「ペテルブルグのトロイカ」 ヴャゼムスキー詩(1834)ブラホフ曲(1865)
「モスクワのトロイカ」 グリンカ詩(1825)ヴェルストフスキー曲(1828)
「ハイダ・トロイカ」 ロマ音楽として知られる。
曲名として歌い出しの一節を表記することもあるが、上記の通称も用いられ、あるいは単に「トロイカ」とされる場合もあり、レコードなどのタイトルだけではどの「トロイカ」であるか判断できないことがあると言う。
日本で一番良く知られる「ヴォルガのトロイカ」は、長らく作詞者、作曲者ともに不明で、まさにロシア民謡だったのだが、近年、レオニード・ニコラエヴィチ・トレーフォレフ(1839-1905)を原詩作者とする傾向にあると言う。邦題「郵便馬車の御者だった頃」の原詩作者である。また、彼が原詩を“書き留めた”と記述する資料もあると言う。
作曲者については、依然未詳であるが、松本さんが調べたところでは、“A.サヴィチェフ”とする1910年の音源があるそうだ。また、「郵便馬車の御者だった頃」の作曲者プリゴージーの可能性を探ったところ、彼はこの曲の改編曲を1906年に発表しているとのことである。
「ハイダ・トロイカ」を称する音源(英語表記 HAIDA TROIKA)が公開されているので試聴したところ、「カリンカ」風であった。
「モスクワのトロイカ」も部分的音源(英語表記 MOSCOW TROIKA)があったので試聴した。歌い出しが「ヴォルガのトロイカ」(Вот мчится тройка почтовая)によく似ていた:
Вот Мчится Тройка Удалая ~
ヴォトゥ ムチツァ トゥロイカ ウダラヤ ~