昨日取り上げた「結核征伐の歌」の歌詞には、ネット上、当方の見る限り2種類の版がある。≪音楽界≫記事から引用した“ああ結核よ 結核よ”で始まる全15番の版は、志賀潔「肺と健康」(三省堂書店 大正3)の附録として収められている(国立国会図書館デジタルコレクション)。
もう一つは、作詞者・遠山椿吉の功績を顕彰するサイト(結核予防の普及啓発| トピックス | 遠山椿吉記念館)に掲出されているもので、全10番の版である。こちらの第1番は“そも肺病は目に見えぬ 結核菌の襲ひ来て 強しと見ゆる体にも 呼吸に障りあるときは その弱点につけ入りて つひに発するものぞかし”となっていて、三省堂版では第2番に置かれている。
記念館版の全10番に、別途第1番“ああ結核よ 結核よ ~”と途中の4番の計5番を付加したものが三省堂版の歌詞になっている。その最終第15番は
“売薬(ばいやく)禁厭(まじなひ)益はなし 永びくとても悲観すな
人事尽くして天に待つ この心こそ良薬と
意志堅剛に持久せば やがては春の回(かへ)り来ん”
であるが、記念館版の最終第10番では“手療治(てれうぢ)禁厭(まじない) 益はなし ~”と、「売薬」が「手療治」になっている。
≪音楽界≫記事の“結核征伐の歌が~九つまである”というのが、長い歌詞を単に略記した版ではなく、第三の異版である可能性も否定できない。
(志賀潔「肺と健康」(三省堂書店 大正3)の附録)