Quantcast
Channel: 愛唱会きらくジャーナル
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1579

結核征伐の歌~謡曲~笛・ハーモニカ

$
0
0
雑誌≪音楽界≫の1914(大正3)年の小さな記事に、「結核予防と音楽」というのが載っている:
 
『日本結核予防協会の事業として遠山医学博士の作歌田村虎蔵氏の作曲にかかる結核征伐の歌が観覧者の手に配付せられた其第一は
 
   ああ結核よ 結核よ 紅顔美麗の少年も 鬼をあざむくますらをも 
   もしこの病にかかりなば 嵐の前の花なれや 恐れてもなほおそるべし
 
といふので九つまである衛生上誠に平易に必要なる智識を人に与へる者である。
 次ぎに結核予防遊戯運動具の中で為になる遊戯の部に謡曲、為にならぬ方の遊戯の部に笛、ハーモニカがある。唱歌も謡曲と同様の価値ある者なるべく衛生と唱歌との関係は研究の必要少からぬ事と思ふ。』
 
キャンペーン・ソングの一つと思えばそれまでだが、“謡曲が結核予防に良く、笛、ハーモニカが良くない”との教示が為されたのが気になる。笛、ハーモニカも呼吸器を鍛える効果がある点では、謡曲と同列だと思えるのだが。楽器内部に湿気、水気が溜ったり、吹き口が不潔になり易いとの懸念の現れだろうか。
 
記者氏は、謡曲だけが特に推奨され、声楽一般の効用として取り上げられないことを不審に思ったのだろう、唱歌もお忘れなくと注文をつけている。当時は、唱歌が学校内に留まる傾向があり、謡曲ほどには家庭や社会に普及していなかったことの反映かも知れない。
 
日本結核予防協会は、恐らく現在の結核予防会に繋がるものと思うが、同会とは過去において些か縁の有ったものとして「結核征伐の歌」に興味が湧き、調べてみた。
 
歌詞は協会が懸賞募集し、選定したもので、上田萬年博士が校閲している。記事では“九つまである”としている歌詞は、実際には十五番まである。当日配付のプログラムには九番までしか載らなかったのだろう。記者氏の心配するまでも無く、五番には、“体操遊戯や声楽や ~ 散歩もよろし旅行よし”と唱歌も謡曲も差別していない。
 
曲は、ヘ長調二/四拍子、♩=108、快活にと指示され、典型的なピョンコ節である。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 1579

Trending Articles