先週に続き、瀧井先生の講話「鴎外と音楽」の第2話を聴いた:
≪文京区立森鴎外記念館 鴎外講座 応用編 「鴎外と音楽2」
日時/平成28年6月18 日(土) 講師:瀧井敬子氏(くらしき作陽大学特任教授、音楽学者)
オペラを日本に普及すべく、西洋音楽と格闘する鴎外と、オペラに携わる若者を支えた鴎外の活動を紹介します。ソプラノ歌手・羽山弘子氏(二期会)が生で歌ってくださるスペシャル企画もあります。≫
今回は、いきなりソプラノ歌手・羽山弘子氏の「沙羅の木」(森鷗外/小松耕輔)独唱で開演。ピアノ伴奏は彼女が弾いて録音したものを使用した。彼女は次のお仕事があるらしく、直ちに退場した。
瀧井先生、記念館庭内の沙羅の花一輪を小道具として活用した。小松版「沙羅の木」は、鷗外が若い人たちを熱心に応援していたこと、新しい音楽である半音階・無調性に馴染めなかったことを話す導入であった。
講話の主たる内容は鷗外訳「オルフェオとエウリディーチェ」のオペラ上演であった。本居長世らの「オルフェオ」上演がグルック生誕二百年記念として1914(大正3)年に計画され、鷗外に台本翻訳が依頼された。台本には様々な版があり、その調整に手間取ったため、鷗外の翻訳作業は予定日までに仕上がらなかった。
上演計画自体も頓挫したが、鷗外は翻訳手稿を本居に送付した。手稿はその後行方不明となったが、数奇な巡り合わせで、永青文庫に所蔵されていることを瀧井先生が確認した。先生が鷗外の訳文と鷗外がドイツで聴いた時の楽譜とから作成していたヴォーカル譜とピタリ一致した。
鷗外訳の歌詞を割り振ったオーケストラ譜による「オルフェウス」は、2005年9月に藝大奏楽堂で初演された。更に、鷗外生誕百五十年企画として、2012年10月文京シビックホールで再演された。
講話の締めは初演録画の視聴(先生の解説付き)であったが、全曲は時間が許さず、途中で打ち切りとなった。その後も暫くお話は続き、予定をオーバーする熱血振りであった。来年は夏目漱石(1867~1916)に因んだ企画をお持ちとのことである。