あるエッセーを読んで、五輪エンブレムについてもう一度書き記して置く気になった。そのエッセーとは、東大出版会PR誌UP4月号の≪[日本美術史不案内] 84 幻再びか 佐藤康宏≫である:
≪~和田三造の図案による1940年大会のための公式ポスターが、1936年のベルリンオリンピックの公式ポスターとよく似ていることを、竹内幸絵~は指摘した。~和田の剽窃というよりは、当時の日本の広告制作者らが旧態依然たる表現に甘んじていたことが問題視される。~1940年は皇紀2600年に当たるとされ、それを記念するためにオリンピック招致もなされたのだった。大会が中止されても~複数の展覧会は開かれた。この戦時中のポスターは、スポーツとともに日本の古美術が国威発揚に利用されることを予告している。~≫
さて、今回の五輪エンブレムは、事前に流布された専門家の予想通り、組市松紋(くみいちまつもん)に決まった:
≪歴史的に世界中で愛され、日本では江戸時代に「市松模様(いちまつもよう)」として広まったチェッカーデザインを、日本の伝統色である藍色で、粋な日本らしさを描いた。≫
(東京2020大会エンブレム 組織委員会 4月25日)
佐藤先生の考察の的確さを実証しているように思われるが、考え過ぎか。UP4月号は4月5日発行である。