四箇月余り前に取り上げた早坂暁氏の「生きたくば蟬のよに鳴け八月は」の、英語教育の逸話は、実は話の導入部だった(早坂暁~井上成美海軍中将~英語教育 2015/12/24(木))。本論は、世界中で戦争をし続けるアメリカ(及び、同盟国日本政府)に対する批判であった。
彼は次のように締め括っている:
≪ オレはヒロシマで原爆に遭遇した河野きよみさんと「あの日をわたしは忘れない」という絵日記をつくり、英文をつけてオバマ大統領に送ったが、返事はまだないぞ。
ピカドンや あわれ
女子供の死ぬるや あわれ
抗議もできない日本人よ あわれ
ピカドンを持ってる人はもっと あわれ ≫
アメリカの大統領が、世界中から届くお便りにいちいち返事を書くと早坂氏が思っている筈も無いが、その後の想定外の成り行きで、大統領がヒロシマを訪れる計画の進行していることが報じられた。近々日本で開かれる所謂サミットを盛り上げる為に、日本政府も実現に熱心らしい。
世界の首脳が被爆地を訪れることにケチを付ける人はいない。誰もが歓迎する。アメリカ大統領が来て献花をすれば、原爆投下側に対する被曝側の複雑な感情も和らぐだろう。大統領が何を思って訪れるのかに拘わらず。
原爆投下の善悪、正否を棚上げし、各自がそれぞれに都合よく解釈して穏便にケリをつけるというシナリオが想定される。時間と共にそれぞれの思いも風化し、消えていくことになる。現に存在する核兵器の処理は永遠の課題、つまり、核兵器は無くならず、これからも進化し続けるだろう。
ところで、上掲結語の詩≪ピカドンや あわれ≫は、竹内浩三の≪戦死やあわれ 兵隊の死ぬるや
あわれ ~ ≫を応用したものだろう。当管理人は知らなかった詩だが、早坂氏と共に寄稿した野上照代氏の「竹内浩三を殺した戦争を憎む」に部分引用されている。