≪エレファント・マン≫という映画があった(生まれつき奇形で醜悪な外見により「エレファント・マン」として見世物小屋に立たされていた青年、ジョン・メリックの半生を描いた英米合作:ウィキペディア)。
実は敬虔で、芸術を愛し、美しい心の持ち主であるエレファント・マンが、彼を虐待する人たちに向かって、
“I am not an animal!
I am A human being!”
と叫んだという。
「私は(一匹の)獣ではない。(一人の)人間だ。」で終わるのが普通の解釈だ。普通はそれで十分こと足りる。
しかし、伊藤笏康先生は違った。不定冠詞のa(ア)が何故強調のA(エイ)になっているのか、と疑問を抱いた。“一人の”と人数をわざわざ強調する意図があるとは考えられない。
ということから、今日の伊藤先生の講義が始まった。放送大学文京学習センターでの公開講座≪‘sugar’と「サトウ」はどうちがう≫と題し、1時間半にわたって英語と日本語の名詞の性格の根本的な違いについて話された。
文法書に書かれている通説とダブらないお話も多く、面白かった。
cat ネコという動物の概念
a cat (一匹の)現実のネコ → 性質、外見は問わず、とにかくネコ
“I am A human being!” → 私は(誰が何と言おうと)一人の人間なんだ。
という先生の解釈に辿り着くまでの、英語と日本語における名詞の性格の違いに関する哲学的な論考も刺激的だが、個別の英語知識も貴重だった。
a cabbage, two cabbages,,, 普通名詞 生き物 植物
a head of cabbage, two heads of cabbage,,,, 物質名詞 無生物 食材