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ジュゼッペ・ヴェルディ~隠し子・捨て子~遅耳二十三年

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本格的なクラシック音楽ファンではない当管理人がジュゼッペ・ヴェルディに親近感を持っているのは、合唱曲「行け我が想いよ黄金の翼に乗って Va, pensiero, sull'ali dorate」を何回か歌ったことがあるからと言う単純な事情による。
 
ついでに略歴などを読んで、彼が作曲家として成功し、名誉、地位、富も得て、恵まれない音楽家の養老院(?)を建てるなどして、国民的英雄視されるようになったイメージを持っている。
 
ところが、些かショッキングな話題が目に付いた:
 
≪オペラ作曲家ヴェルディに新事実 隠し子の存在、作品に影響 ビジュアル音楽堂 2016/2/20
「椿姫」「リゴレット」「アイーダ」などのオペラで知られるイタリアの作曲家ジュゼッペ・ヴェルディ(18131901年)に隠し子がいた。そんな私生活上の新事実がヴェルディ作品に新たな光を当てている。~
 
ヴェルディは前妻とその子供を亡くした後、歌手のジュゼッピーナを伴侶とする。2人の間には子供がなかったといわれてきた。しかし音楽評論家の加藤浩子さんは201512月に刊行した自著「オペラでわかるヨーロッパ史」(平凡社新書)の中で、2人が結婚に至るまでに隠し子がいたことを書いている。児童養護施設に捨てられたといわれるその女児の子孫、ヴェルディの玄孫(やしゃご)に当たる人物に加藤さんは面会した。~≫イメージ 1
 
取り敢えずネット上の情報に当たってみた。先ず、加藤浩子さん自身のブログから:
 

ヴェルディとジュゼッピーナの知られざる私生児 November23, 2015

ヴェルディはやがて年の離れたいとこを養女にして家を継がせます。なので、ヴェルディには直系の子孫はいません。
 と、いうことに、長い間、なっていました。
ひょっとしたらジュゼッピーナは、ヴェルディの子供も身ごもったのではないか。でもスキャンダルを恐れて、赤子を棄てたのではないか。そういう話は、1990年代から出始めました。90年代に膨大なヴェルディの伝記を著したフィリップス・メッツ女史は、クレモナの棄子養育院の記録から、1851年の春に2人の間の子供が棄てられたと推測しています。イメージ 2
 




そしてこの春、この問題に決定打となりうる著書が発売されました。著者は指揮者のシモーネ・フェルマーニとジャーナリストのジョヴァンニ・フェルマーニの兄弟。2人はヴェルディとジュゼッピーナの間に生まれ、棄てられた(里子に出された)女児のひ孫だと主張しています。≫
 
ヴェルディの隠し子疑惑は二十数年前に初めて浮上したということか。彼の死後九十年余だ。その震源たる“フィリップス・メッツ女史の膨大なヴェルディの伝記”について検索すると、原著は
 

Verdi: ABiography, 1992 Oxford University Pressthe UK in 1992 the US the following year

 
と判明。イメージ 3
 

Morecontroversially, she found evidence suggesting that Giuseppina Strepponi gave birth to a daughterin 1851 while she was Verdi's mistress but years before they married.[10][11]The child was abandoned at an orphanage in Cremona but thenentrusted to the care of a family living near Verdi's estate at Sant' Agata.[12]  pp. 289–294だそうだ。

 
つまり、フィリップス・マッツ女史の説によれば、ヴェルディとその再婚相手ジュゼッピーナは、正式に結婚するずっと前1851年に娘をもうけた。娘はクレモナの孤児院に捨てられ(預けられ?)、後にヴェルディのサンタガタ地所近くのある家族に託された。“捨て子”の語感はキツ過ぎるようだ。
 

フィリップス・マッツ女史については、≪MaryJane Phillips-Matz (January 30, 1926 – January 19, 2013) was an Americanbiographer and writer on opera.ということで、3年前にほぼ87歳で亡くなっている。著作家として名を成したようだ。

 
≪ヴェルディの隠し子≫は、やはり知られていなかったらしいことが、ニューヨークタイムズなどの書評から窺われる。
 
マッツ女史は、ヴェルディを作曲家としてだけでなく、全人的に描写しているらしい。すなわち、一般に思われているような聖人君子ではなく、普通に感情の起伏があり、損得の計算もし、保身を怠らない普通の人であったことを厖大な記録から明らかにしているとのことである。
 
≪隠し子≫事件は、彼の雄大な人生の中のひとコマなのだ。
 
だからと言って彼のオペラが光彩を失うものでもないことは言うまでも無い。

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