金重明/著「13歳の娘に語るアルキメデスの無限小」は、前にも述べたように、冗長な物語部分が目立つのだが、最終第6章は大いに気に入った。≪超準解析≫と題されており、初めて目にする術語に先ず惹かれ、その内容にびっくりする。高級な数論は措き、≪超実数≫なる概念の理解に専念しよう。
素人向けの解説として解り易く記述されていると思うが、当方の理解を整理すると次のようなことになる:
総ての自然数よりも大きい数φを定義する。1< φ、2< φ、3< φ、、、。無限大超実数と呼ぶ。
φ+1、φ+2、、、φ-1、φ-2、、、も無限大超実数である。
1/φ=ωはあらゆる正の実数よりも小さい。無限小超実数と呼ぶ。
aを実数として、α=a+ωを有限超実数と呼ぶ。aをαの実数部と呼ぶ。αはaに「限りなく近い」という。
二つの有限超実数α、βがあってα-β=ωならば、αとβは限りなく近い。
aに限りなく近い実数はaだけである。
aに限りなく近い超実数は無限個ある。
以上が我が理解の文章表現である。これではイメージが湧かない。そこで、見える化してみよう。
|-∞ 0 +∞ |
-無限大超実数 | 実数+有限超実数 | +無限大超実数
← 超 実 数 →実数の領域は+-双方向に無限に伸びる筈だが、その外側に(+-の)無限大超実数の領域が広がる。
もっと奇妙なのは実数の領域内に超実数が充満することだ。上記の通り、≪aに限りなく近い実数はaだけであるが、aに限りなく近い超実数は無限個ある≫のだ。
数直線において、実数は超実数の海に点々と離散的に浮かぶイメージである。これは、有理数と」無理数の関係に相似である。
数直線の連続性の感覚からすれば、実数(有理数と無理数)の間に隙間を見付けて新たに超実数なる数を嵌め込むことなど不可能に思えるが、≪定義する≫と言われれば否定も出来ない。
とにかく、実数を含む超実数の集合とその中での演算を定義することにより、従来の曖昧あるいは難解な無限大・無限小の数学がすっきり整理できるというから、“正しい”方向なのだろう。少なくとも“役に立つ”≪超準解析≫のようだ。
将来、超実数の隙間を埋める極超実数などが考案されないだろうか。更に、更に、、、。
なお、超準解析はNon-standardAnalysisの訳語だそうで、この新しい数学は≪A . Robinson: Non-standard Analysis,NorthHolland,Amsterdarn,1966≫に始まるそうである。
本年は≪超準解析五十年≫という節目の年なのか。