アミーア・アレクサンダー[著]「無限小世界を変えた数学の危険思想」(2016/2/13(土))は、古代ギリシャのユークリッド、アルキメデス流の数学(幾何学)の基本思想である演繹法と、ルネサンス以降の実験的科学の基本思想である帰納法との角逐を、キリスト教世界におけるカトリック対プロテスタントの攻防の形で語る大変ユニークな書である。
著者によれば、本来数学の問題である≪無限小≫に関する理論闘争が、キリスト教世界の覇権争いと一体化し、必然的に政治闘争、戦争に及び、ヨーロッパ、ひいては世界の歴史を左右したとなるらしい。本当にそうなのかどうか、歴史家による追試が待たれる。
日本史でかなりの存在感を示す≪イエズス会≫がその宗教闘争におけるキープレーヤーだったとか、そっくりの名前の≪イエス会≫も絡んでいたとか、個別に面白い話題も豊富だ。