一応社会に交わって生きているので、偶には時事問題に口を挟んでみたい。まさに好みの話題が目の前にある――長距離弾道ミサイル。北朝鮮が衛星打ち上げと称するが、仮想敵国扱いで弾道ミサイルとしか呼んで貰えない、というのも意地の張り合いじみて滑稽な図だ。
ミサイルだと言われながらも、“宇宙空間に達したようだ”と言われ、つまり、人工衛星を軌道に入れたことを事実上認められている。
ところで、今回はミサイルや衛星について、やけに情報が少ない印象を受けるのだが、何故だろう。打上げた方はもっと宣伝しても良さそうだし、仮想敵視する側も、地上や艦載の高性能レーダーに加えて、アメリカの軍事偵察衛星が一部始終をモニターしているから、軌道に入った≪衛星≫がその後どのように地球を周回しているかなど、報じられてもよさそうなものだ。お互いに、あまり言いたくない事情があるのかな。当方のアンテナが鈍感なのかも。
ここで宇宙空間と呼ぶのは、地上100kmからの上空を指すらしい。理屈では、その先ずっと宇宙の果てまでを含むのだろう。気の遠くなるような途轍もないスケールに頭を切り替えなければならない。
その宇宙空間が膨張しているとは、よく耳にする話題だ。もともと果てし無い宇宙のイメージを持っていると、“宇宙が膨張”するなどというのは全くナンセンスなのだが、天文学者、物理学者はそれを“研究”して飯を食っている。
宇宙膨張の根拠として素人向けに語られるのは、“遠くの天体ほど速く離れて行く”という観測結果である。地球を中心とする天動説に逆戻りしそうだが、そうではなくて、どの天体から見ても、同じことが言えるという事実である。
この現象を上手く説明できるのが、“空間自体が膨張している”とする理論である。確かに、弾力性の有る紐や膜を宇宙空間に見立てた説明は、なるほどと思わせる。一件落着と片付けても良さそうな気がする。
しかし、素人ながらに、ちょっと待てよ、と疑義を指し挟みたくなる。紐や膜での例え話には、伸び縮みしない現実の空間が舞台として厳然と存在するではないか。言わば、不動の絶対空間で安泰を享受する我々が、伸び縮みする紐や膜を観察(観測、計測)しているのだ。
対して、天文宇宙の観測においては、観測者たる我々が空間内に嵌っているのであるから、その空間自体の伸び縮みを知覚するのは不可能ではないか。天体が遠ざかることは観測できるが、空間が膨張することは如何にして証明するのか。“遠くの天体ほど速く離れて行く”からだ、と言うのでは循環論法になる。