図書館に借用を申し込んで半年待って漸く順番の回ってきた評判の本を、返却期限の今日、読み終えた:
ランドール・マンロー(原著者)「ホワット・イフ?」(早川書房2015/6/24)
原題 WHAT IF?: SeriousScientific Answers to Absurd
Hypothetical Questions
≪光速の九〇%の剛速球をバッターに投げたらどうなる? 人類総がかりでレーザーポインターで照らしたら月の色は変わる? 突拍子もない思いつきに物理と数学とマンガで読者の疑問を徹底解明、人気のマンガ科学解説サイトを書籍化した全米ベスト&ロングセラー≫
宣伝通りの本だ。馬鹿げた(ふざけた)質問に対し、おおよそ真面目な解答を与えている。質問の性質上、解答も現実離れしてはいるが、解答過程は(かなりの仮定のもとに)論理的である。素人の手には負えない数学や物理学の知識を駆使している部分が多い。
それらの言わば≪思考実験≫を追体験することは、ボケ始めた脳の活性化に寄与するのではないか。本書は、更に、想定外の優れものの呼称を与えるに値する内容をも有している。意外な事実や珍しい記録を教えてくれることだ。例えば:
≪大英帝国の日没≫June 4, 2013 Q:大英帝国に遂に日が没した(としたら)のはいつでしたか。
A:未だ没していない。ディズニー・ワールドよりも小さな地域に住む数十人の人々のお蔭だが。
大英帝国の領土(植民地など)が世界中に広がっていて、常に帝国のどこかは昼間であった栄光の時代は、第2次大戦後の植民地独立で、遠に終わっていると思うのが普通だろう。ところが、英国はいまだに14の海外領土(南極を含む。)を有しており、恐らく1800年前後の頃からずっと、“日没せざる帝国”なのだと言う(南極を除く13領土だけでも)。
≪太陽を失った地球≫ 陽光が突然消えたら地球はどうなるかとの問いに対し、太陽自体が発光しなくなったという前提で、地上に磁気嵐が発生しなくなるなどの思いがけない“有益な”影響を幾つも列挙した後、解り切った正解を一言:我々は凍え死ぬ。
と、これは余り面白くないのだが、“明るい日光にさらされるとくしゃみが出る人は多い”という記述が印象的だった。
当管理人の数十年前の体験で、鼻孔内に直射日光を入れるとくしゃみが出るという事を知った。それが特異体質の所為ではなく、普遍的な現象の一環であることを本書で初めて知った。原著者のブログでの参照先に次のような記述がある:
≪The tendency tosneeze upon exposure to bright light is autosomal dominant and affects 18-35%of the population.≫(Abstract See comment in PubMed Commons below Mil Med. 1993 Dec;158(12):806-9. Thephotic sneeze
reflex as a risk factor to combat pilots)
常染色体優性遺伝で人口の2,3割にこの傾向が見られるというのか。ありふれた現象なのだな。