新年の旅初めは北国へのフライトで、機内オーディオサービスのクラシック・プログラムを聴いた。マリア・カラスが、プッチーニの《トスカ》から第2幕のアリア「歌に生き恋に生き」を歌っていた。
その終唱部で既視感ならぬ既聴感に襲われた。何度も聴いたことがあるからという事ではなく、何か別の歌を思い出させるのだ。直ぐに、「誰も寝てはならぬ」のメロディーが浮かんだ。こちらの方がわが耳によく馴染んでいる。
気になるので、両方の歌をYoutube で視聴して確認した。「歌に生き恋に生き」の終唱部は、≪Perche me ne rimuneri cosi? なぜこのような報いを与えるのか≫だ。対する「誰も寝てはならぬ」の終唱直前部が≪Tramontate, stele! All’alba vincero! 星々よ沈め! 夜が明ければ、私の勝ちです!≫だ。やはり、よく似た印象を受ける。
楽譜を見比べることにした。
プッチーニ《トスカ》から第2幕のアリア「歌に生き恋に生き」
プッチーニ《トゥーランドット》第3幕から「誰も寝てはならぬ」
ぴったり一致はしないが、大変よく似ているとは言えるだろう。「歌に生き恋に生き」はニ長調で、「誰も寝てはならぬ」はト長調で書かれているが、後者の問題部分は臨時♯により、事実上ニ長調に転調しているのではないか。とすれば、調も同じだと言える。