近くに文京ふるさと歴史館という区立の博物館がある。先日、外出中に待ち時間が出来たので覗いて見た。高齢者は無料というのが有難かった。こじんまりとした施設で、よほど丹念に鑑賞しない限り、15分もあれば一応全部見て回れる。
地域の博物館だから、展示内容が身近に感じられる。己の居住地附近の昔の様子を知る事が出来る。あまり実用性は無いが、好奇心を満足させてくれる。
他方、地域ゆかりの文化人となると、急に全国区的スケールで迫って来るものがある。≪文(ふみ)の京(みやこ)ゆかりの文化人≫なるリーフレットに、“平成27年に記念の年を迎える主なゆかりの文化人”として、北原白秋、谷崎潤一郎、野上弥生子、花柳章太郎、寺田寅彦、棟方志功、山田耕筰らが列挙されている。
谷崎潤一郎のトピックとして、彼の花柳章太郎(新派俳優)宛書簡(昭和31年5月15日付)が、映画「残菊物語」を見た率直な感想や、花柳の二人の息子についての言及がある、などと紹介されている。
文化勲章を受章したほどの文豪だけあって、その手跡は、非文化人の解読能力の到底及ばない芸術的水準にある。という訳で、親切にも館側で解読した結果を活字体で表示している。これも有難い。お蔭で、候文ながら、大意は汲み取れる。
我々凡人の常用しない書簡作法に則り、本文末尾、宛先名の左下にと脇付している。そこで引っ掛かった。待史となっている。侍史ではない。当方も耄碌気味だから、はて、どっちだったかなと一瞬迷ってしまう。しかし、字音で≪じし≫と覚えているから、≪たいし≫ではなく、侍史の筈だと結論した。