「公徳經濟 二宮翁の歌」を収載した同名の小冊子(縦19cm、横9cm弱)がある。発行者は朝野文三郎、東生鉄五郎、朝日仲次郎の3名、発行所は東生萬巻堂、朝野正文堂の2箇所で、明治35年2月20日発行となっている。
野村成仁作曲、草山貞胤作歌の「公徳經濟 二宮翁の歌」は、文字通り二宮尊徳を顕彰する歌である。歌詞は七五調4行24節で、結構長い:
“高く尊き天地の 恵みにむくふ道はしも
近きにありと教へける あはれ尊き二宮氏
相撲の国の足柄の 常盤なすてふ栢山村
天明七年七月に 生れ給ひき此の大人は
~~~”
曲はハ長調、4/4拍子、16小節、4段書きで、A A’B C の形式である。広く一般に歌われるよう、単純なメロディーとなっているが、ヨナ抜き節ではなく、ナ抜き節である。作曲の野村成仁先生は、当ブログに過去2度登場している(2012/2/7(火) 2015/1/5(月))。結構売れっ子だったのかもしれない。
二宮尊徳は歴史上有名な偉人ではあるが、薪を背負って歩きながら教科書を読んで勉強するイメージは、現代人には近寄り難い。その勤倹力行、報恩報徳思想もあまり親近感を持たれていない筈だから、彼を讃える歌なぞ、とっくに埋もれてしまっている、と思ったのだが、何と、盛大に、しかも公的行事で合唱されていることを発見した:
第19回全国報徳サミット秦野市大会を開催しました
【平成25年10月19日(土)午前9時~午後0時40分開催】
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6 秦野市合唱連盟による合唱披露
「公徳経済 二宮翁の歌」
草山貞胤が明治3 5 年に作詞をした歌
「二宮金次郎」
文部省唱歌( 明治4 4 年発表) で金次郎の人生を讃えた歌
「丹沢讃歌」の披露
壮大な丹沢の美しい四季を詠った歌
「二宮翁の歌」という表題で復刻版(新版?)も出ている(飯吉亮一 1985)。やはり、簡単に忘れられる思想家ではないようだ。