以前、“白熊・黒熊・赤熊”について書いた(白熊仔熊~ハグマ~コグマ 2013/7/28(日) )。発音は“ハグマ・コグマ・シャグマ”だった。意味は白・黒・赤各色の払子などだった。その“赤熊シャグマ”なる名詞に最近お目に掛かった。
東大出版会のPR誌「UP」11月号に木下直之氏が「クマを見る」と題して非常に興味深いエッセーを寄せている。その中の1項目に「上野公園内獣室」がある。この項目名自体、どこで切れるのか不明だが、木下氏も“「上野公園内獣室」という不思議な図が『上野動物園百年史』に載っている。”と書き出している。
お話も面白いのだが、引用されている明治十一年(1878)三月十二日の読売新聞記事の要約にある“北海道のクマとも赤熊(しゃぐま)とも異なり”に目が釘付けされた。赤熊(しゃぐま)が猛獣のクマの一種をも意味することになる。
そこで、改めて検索したところ、“あか‐ぐま【赤熊】ヒグマの別名。”との記述があった(デジタル大辞泉)。“ひ‐ぐま【×羆】クマ科の哺乳類。ヨーロッパからアジア北部、北アメリカにかけて分布。多くの亜種があり、ふつう体長約2メートル、体重約200キロ。体色も灰褐色・赤褐色・黒褐色と変化が多く、地方によりアカグマ・ハイイログマなどとよばれる。北海道にすむ亜種エゾヒグマは~”とも。
この説明によれば、猛獣のクマの場合は“アカグマ”であり、“シャグマ”は払子など飾り物を指すのが普通の用法である。百三十年余り前の読売新聞が用語(ルビ)を間違えたのか、或いは当時と近時とで日本語の用法が異なるのか、興味深いことだ。
蛇足で、エッセー中、“明治八年(一八六九)”との表記があり、どちらの数字が正しいのか迷わされる。実際は、文脈から“明治八年(一八七五)”が正しいと判るのだが。