某古書目録に「大正少年唱歌 第一輯」(小松耕輔・葛原幽他編 大7 初)が載っていた。“幽”は本当はクサカンムリを頂くのだが、ワープロソフト(字典)に登録されていないので代用されたものだ。“他”と略されたのは梁田貞である。
結構なお値段が付いていたのでどんな歌が収載されているのか、調べたところ、次の10曲であった:
一 学校生徒 小松
*二 花と春風 梁田
三 お友達 梁田
*四 すゞめ 小松
五 まり 小松
六 カナリヤ 梁田
七 箱庭 小松
*八 とんび 梁田
*九 蓮の葉の露 梁田
*十 兵士 小松
(*印は文部省認定)
作詞はすべて葛原によるものと思われる。
このうち、「八 とんび」がお馴染みの唱歌であった。その歌詞は、覚えているものと微妙に違うので書き写しておこう(勿論、記憶の間違いだろう。):
とべ とべ とんび、 空高く
なけ なけ とんび、 青空に。
ピンヨロー、ピンヨロー、
ピンヨロー、ピンヨロー、
たのしげに、輪をかいて。
とぶ、とぶ、とんび、空高く、
なく なく とんび 青空に。
ピンヨロー、ピンヨロー、
ピンヨロー、ピンヨロー、
たのしげに、輪をかいて。
小学校の教材としては、第5学年第1学期7月への配分が適当と記されている。
「六 カナリヤ」は、成田為三の同名の童謡を思い出させる。こちらは西條八十の作詞で、「かなりや」とひらがなだ。「赤い鳥」1918(大正7)年11月号に詩が、翌1919(大正8)年5月号に曲が発表されたそうだ。したがって、葛原・梁田版「カナリヤ」の方が先に世に出たことになる。