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日本鉄道歌謡史~電車~電車ごっこ

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松村洋「日本鉄道歌謡史 1 鉄道開業~第二次世界大戦」(みすず書房 2015.8)を図書館から借りて来た。発行後2箇月しかたっていない最新刊の本をこんなに早く借りられるとは、大変珍しいことだ。思うに、特殊な分野の専門書のような書名だから、借用申込が殺到する心配は無いということだろう。イメージ 1
 
内容紹介:“鉄道は庶民の意識や暮らしをどう近代化したのか。人びとの暮らしの近代化は、鉄道をどう変えたのか。鉄道の歌を通して、人びとが体験した近代化のさまざまな側面を考える。”
 
歌本ではないから楽譜は一切載っていないが、歌詞は部分的に紹介されている。どんな歌が取り上げられているか、目次が一覧表の役を果たしてくれる:
 

I 鉄道という異物
1
 しょんがいな(しょんがえ節)……1872年頃
2
 開化気楽謡……1873年頃
3
 ひやひや節……188586年頃
4
 レールエ節(詞・土谷金太郎)……1896年頃
5
 当世流行えんかいな節……189899年頃

II
 鉄道の旅
6
 戒青年(欣舞節)(詞・横江鉄石)……189192年頃
7
 東北漫遊(愉快節)(詞・酔郷学人)……189597年頃
8
 汽車の旅(欣舞節)(詞・横江鉄石)……1897
9
 鉄道唱歌(東海道編)(詞・大和田建樹/曲・多梅稚)……1900
10
 汽車(曲・大和田愛羅/文部省唱歌)……1912
11
 松の声(女学生堕落の歌)(詞/曲・神長瞭月)……1907
12
 あゝ踏切番(詞/曲・添田啞蟬坊)……1918
  引き込み線(1) 鉄路のサンバ~奥中山の三重連

III
 都市を行く電車
13
 スカラーソング(詞・神長瞭月/曲・滝廉太郎)……1909年頃
14
 電車問題市民と会社(詞・不知山人/曲・のむき山人)……1906
15
 電車唱歌(詞・石原和三郎/曲・田村虎蔵)……1905
16
 電車(詞・葛原𦱳/曲・小松耕輔)……1916
17
 東京節(詞・添田さつき/曲・「ジョージア・マーチ」)……1919
18
 復興節(詞・添田さつき/曲・添田さつき)……1923
19
 東京行進曲(詞・西条八十/曲・中山晋平/歌・佐藤千夜子)……1929
20
 グッド・バイ(詞・佐藤義美/曲・河村光陽)……1937
  引き込み線(2) シッタンガラガラ~沖縄のケービン

IV
 戦争と鉄道
21
 日本陸軍(詞・大和田建樹/曲・深沢登代吉)……1904
22
 鴨緑江節(詞・岡田三面子/伝承曲)……1920
23
 北はアムール(詞・村田豊次/曲・太田畔三郎)……1937
24
 大陸列車(詞・吉田碌務/曲・陸奥明/歌・塩まさる)……1940
25
 軍国の母(詞・島田磬也/曲・古賀政男/歌・美ち奴)……1937
26
 兵隊さんの汽車(詞・富原薫/曲・草川信)……1940
27
 海の底さへ汽車は行く(詞・坂本正雄/曲・大久保徳二郎/歌・東海林太郎ほか)……1943
  引き込み線(3) センチメンタルな旅と比島決戦

 
鉄道歌謡というと「鉄道唱歌」が元祖かと思うが、これは1900年の発表で、鉄道開業(1972年)の実に28年後であることに気が付く。本書によれば、元祖は、その開業直前(の頃)に歌われた「しょんがいな(しょんがえ節)」である。
 
“道はできたが 蒸気車まだかいな  道も車もでき次第
            できたらたんと乗れ陸蒸気 しょんがいな 
~~~”
 
「鉄道唱歌」の出現が意外に遅いのは何故だろうかと気になる。地理唱歌として成り立つには、相当広い範囲に鉄道網が張り巡らされた状況が必要だということだろうか。要するに、鉄道網が発達した段階で地理唱歌としての「鉄道唱歌」が生れるべくして生れたと理解すればよいのだろう。
 
≪ 電車(詞・葛原𦱳/曲・小松耕輔)……1916年≫の項に、関連曲として「電車ごっこ」(井上赳/信時潔 1932年)と、その改作曲(歌詞改変、下総皖一曲 1941年)にもかなり詳しく触れている。
 
上記と紛らわしいが、≪ 電車(詞・葛原𦱳/曲・梁田貞)≫なる歌について、当ブログで書いたことがある(2011/10/28())。この歌は1924年ごろの作と思われる。ビクターからレコードが発売されている(1931年 歌:西村静子)。
 

本書によれば、葛原・小松・梁田の3名は、その頃、共同作業で唱歌集を編んでいたということだ。

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