女性の名前の前に付する敬称は、Miss(未婚者)とMrs.(既婚者)が伝統的で、婚姻情報を嫌う向きにはMs.(ミズ)を用いるのが新しい習慣であると4,50年前に教わった。
これに関し、某国営放送ラジオの語学テキスト「実践ビジネス英語」8月号の巻頭評論が大変勉強になった。
Ms.(ミズ)に続く新手の敬称が早くも広まりつつあるというのだ。それはMx(ミクス)で、女性の未・既婚別にも、男女の別にも関係無く誰に対しても使える敬称であると言う。
これは便利だ。日本語の様、殿と同様の使い方になる。英語初学者も大助かりだ。そして、今年の5月に Oxford English Dictionary が“Mx. を正式に収録すると発表して”話題になったとのこと。
と、感心していたところ、次のようなウェブニュースが目に入った:
ニューヨーク・タイムズ・ニュースサービス 2015年7月18日17時53分
次にくるのは「Mx.」(ミックス)かもしれない(「Ms.」「Mr.」の代わりとして考えられた、性別が中立の敬称造語)。
この言葉をめぐる論議が、この5月にネットで燃え広がった。辞書の世界で大きな影響力を持つオックスフォード英語辞典(OED)の編集部が、敬称にMx.を加えることを検討している――そんな「発表」が大々的に報じられたからだ。
ネットで大きな波紋を広げるニュースによくあるように、今回もかなりの尾ヒレが付いていた。本当のところは、それほど衝撃的なものではなかった。OEDなどを刊行しているオックスフォード大学出版局の関係者が、性的に中立な敬称にMx.も追加されるかどうか尋ねられたことがきっかけだった。「はい」という答えの後に、同出版局で出しているオンライン辞典の一つOxfordDictionaries.comで「検討している」という説明が続いたが、「はい」の部分が雪だるま式に膨らんでしまった。~~~”
敬称“Mx”自体に関する解説はラジオテキストの巻頭評論とことなるところは無い。だが、オックスフォード英語辞典(OED)の編集部は、“敬称にMx.を加えることを検討している”とコメントしたのが真相だという。つまり、“Mx. を正式に収録すると発表”した訳ではないのだ。
“「はい」の部分が雪だるま式に膨らんでしまった”中に、ラジオテキストの巻頭評論も仲間入りとなり、ちょっと権威を落とすことになりはしないかと心配だ。