以前、「仏教聖歌」(仏教音楽協会、第11回発表、1940)なる小型の歌集に「お地蔵さま」(作歌・権藤はな子)という童謡を見付けたことを記した(長妻完至~仏教聖歌~権藤花代(はな子)2013/6/8(土))。権藤は、彼の有名な「たなばたさま」の(あまり有名でない)作詞者である。
その「お地蔵さま」の後に「お盆が来るから」(権藤はな子/弘田龍太郎)という同作詞者の童謡が、もう一つ収載されているのに気が付いた。
一、機織虫(はたおりむし)の 母さんは とんから とんから お機(はた)をり
お盆が 来るから 子供が 大勢(おおぜ)で 忙(せわ)しかろ
二、機織虫の 母さんよ その機 どの子の 着物(べべ)にする
お盆が 来るから ののさまに 子供の きものは それからよ
一般に仏教行事と意識される“盆”にちなむ歌詞だから仏教聖歌になるのだろうが、内容的には「お地蔵さま」同様、抹香臭くない。むしろ、“子だくさん”の社会問題を婉曲に取り上げているように感じられる。
歌詞中、“機織虫”と“ののさま”の2語を検索した。“キリギリス”と“神仏”だそうだ。
“とんから とんから”が機織りの擬音語だろうと思い、キリギリスの鳴き声を試聴したが、“ジーー”としか聞こえなかった。そこで誤解しているようだと気が付いた。“機織り”自体の音なのだ。昔の人力式の織り機の音ならば、“とんから とんから”と聞こえても不思議ではなさそうだ。
すると、“キリギリス”が何故“機織虫”なのかと別の疑問が湧く。ネットの動画でキリギリスの動作を見ると、翅を間歇的に打ち合わせるように見える。それが織り機を連想させたのだろうか。ほかの昆虫には見られない特徴なのか。的外れの素人語源学だったかな。
今は、“とんから”よりも“とんからり”の方が優勢だ。“とんとんとんからりと 隣組~~~”なんて歌がある(あった)。観光資源の“トンカラリン”もある。
肝腎の「お盆が来るから」の歌に戻ろう。ニ短調(♭)2/4拍子、“急いで[M.M.♩=132]”22小節。計算上は2番まで演奏しても40秒しか掛らない。本当に“忙(せわ)し”そうな童謡だ。例によって伴奏譜を活用すれば、結構気の利いた二部合唱になりそうだ。
なんと、偶然ながら、今日は弘田龍太郎の誕生日だ(1892.6.30生)。