昨日、当欄で最後にチラと触れた別の歌と言うのは、「丘を越えて」(島田芳文/古賀政男/藤山一郎)という古い歌謡曲だ。歌詞は:
“1 丘を越えて 行こうよ 真澄の空は 朗らかに晴れて 楽しい心 鳴るは胸の血潮よ 讃えよ わが青春(ハル)を いざ行け 遥か希望の 丘を越えて 2 ~~~”
ある解説サイトに“1931年(昭和6年)、新興映画「姉」の主題歌として作ら
れ、藤山一郎さんの歌でヒットしました”とある。
「ピクニック」 丘を越え 行こうよ ~
「丘を越えて」 丘を越えて 行こうよ ~
歌詞がそっくりなのは偶然だとも言える。作詞者の頭の片隅に残っていた別の歌の歌詞が無意識のうちに採用されたということもあり得る。今回の例は後者に当たるとすると、時間的関係を見たくなる。
「ピクニック」 1962年4月 NHKみんなのうた放送
「丘を越えて」 1931年 映画興行?
「ピクニック」は、いつ、どのような形で世に出たのか、手掛かりは無いが、偶々手許にある「青年歌集 第四篇」(関鑑子編 音楽運動社発行 昭和30年4月10日)の≪イギリス曲≫の部に、イギリス民謡として収載されている(pp.21-22)。何らかの出版物を基にしていると思われる。編者の後記は1955年2月21日となっており、編集作業は多分前年から行われていただろう(第三集は1954年7月15日発行)。
作詞者については次のような情報が有る:
“萩原英一(1887-1954)明治20年11月30日生まれ。幸田延(のぶ)らに師事し,明治44年ドイツに留学。大正3年帰国し,5年母校東京音楽学校(現東京芸大)の教授となる。同校吹奏楽団の設立にもつくした。昭和29年6月21日死去。66歳。(デジタル版日本人名大辞典+Plusの解説)”
彼には1920年代から幾つかの音楽書編著があるので、その中に「ピクニック」が収録されている可能性がある。いずれ調べてみよう。