歌詞批判を続けよう。やはり北国の病院ロビーコンサートに組み込んでいる「かきつばた」を俎上に載せる。北原白秋の原詩は次の通り(青空文庫):
柳河(やながわ)の 古(ふる)きながれのかきつばた 晝(ひる)はオンゴの手(て)にかをり
夜(よる)はしをれて 三味線(しやみせん)の ほそい吐息(といき)に泣(な)きあかす
ケエツグリのあたまに火(ひ)ん點(ち)いた、潜(す)んだと思うたらけえ消(き)えた
末尾の“けえ消(き)えた”は“かき消えた”の意味であると白秋自身が述べている(作曲白秋民謡集 p.13)。
ところが、我々の見る「かきつばた」の楽譜では、この部分は“ちい消えた”となっている。Youtubeの音源でも、そのように歌っているようだ。
前に、同じ作曲者(多田武彦氏)の「梅雨の晴れ間」における歌詞の単純ミスの可能性について記した(梅雨の晴れ間~日の光(北原白秋)~日光の(多田武彦) 2014/5/6(火))。“けえ消えた”→“ちい消えた”も単純ミスなのだろうか。