都心の某大学構内の通路に沿ってキャラボク(低木)が十本ほど植えられている。秋になっても赤い実が着くのを一度も見たことが無く、不思議に思っていたが、イチイ(高木)同様、雌雄異株の木であると教わり、納得した。
今からでも遅くないから、雌木を混植したらどうか。一年中変わり映えしない緑のままであるより、季節のアクセントが感じられるようになり、木の実マニアとしては抓み食いの楽しみも出来る。
あの赤い実は甘いが、水っぽく、痛み易い。果実酒には向いているのだろうか、アルコール・アレルギーの当管理人には実験できない。蜂蜜漬けになら使えるだろうか。
そのキャラボク(イチイも同様)の赤い実の核になっている黒い種子には毒があるそうだ。館野正樹先生(植物生態学)がUP5月号に寄せた《イチイ大明神》の中で、イチイの仲間が作るタキシンという毒物を紹介している。アガサ・クリスティの推理小説『ポケットにライ麦を』で使われたそうだ。
タキシンがキャラボクの種子に含まれるとすると、果実酒などに利用するには、種子を取り除いた方が良いのだろうか。それとも、ほどほどに毒が滲出して薬用酒になるだろうか。
館野先生によれば、イチイの樹皮に棲むカビが抗ガン剤を作るそうだ。パクリタキセルと言って、乳ガンに効くという。
毒と薬を併せ持つイチイ(キャラボクも)は、木材としても美しくて加工し易く、貴族などの持つ笏にも使われたとのことである。それで、《イチイ大明神》の称号に値するわけだ。