歌のテーマは、恋、愛、恋愛が多い。特に流行歌、歌謡曲はそうだし、クラシック音楽の頂点にあるオペラも、その殆どは愛欲劇だと公言する人が少なからずいる(当管理人は知識不足)。恋・愛というものが、歌というより人生における最大テーマであることの現れなのかも知れない(という説も借り物である)。
今朝の朝日新聞(p.31 文化の扉)に、《はじめての国語辞典》として、多種の国語辞典を横並びに比較一覧する試みが載っている。
恋って?辞書でも変わるその意味 国語辞典入門(2015/04/05) 国語辞典はどれも同じと思っているあなた。ページをめくればそれぞれ個性を放っている。隠れたベストセラーといわれ、改訂のたびに進化してきた。辞書は私たちに問いかける。言葉とは何か――。「国語辞典には個性がある。読み比べてみればその違いに驚くはず」。日本語学が専門の学者芸人、サンキュータツオさんはまず形容詞をひいてみて、と薦める。同じ「美しい」でも「うっとりさせる感じ」(岩波国語辞典)、、、、 ”
というように本文は主要辞書出版社の辞典を比較し、特徴を簡潔に仕分けしているが、大きな図解は、“辞典別に聞きました こい(恋)って何ですか?”の副題で4種の辞典の解説を並べている。
“岩波 異性に愛情を寄せること、その心。恋愛
三省堂 人を好きになって、会いたい、いつまでもそばにいたいと思う、満たされない気持ち(を持つこと)
新明解 特定の異性に深い愛情をいだき、その存在が身近に感じられるときは他のすべてを犠牲にしても惜しくないほどの満足感・充足感に酔って心が高揚する一方、破局を恐れての不安と焦燥に駆られる心的状態
明鏡 特定の異性(まれに同性)を強く慕うこと。切なくなるほど好きになること。また、その気持ち。”
確かに、こう並べてみると、説明文の長短や具体性・抽象性が驚くほど多様であることが解る。編纂
の時期により、用語法の時代性(時々の社会的関心事)が反映される点も、当然とは言え、面白い。
偶々、東大生協「ほん」第390号(2015.2.9)が《特集 恋》であった。恋をテーマあるいは中心軸とした著作物の読後感想あるいは書評であり、必然的に恋とは何か、とか、恋のあり方などにも筆が及ぶ。冒頭緒言に、上記岩波の兄弟辞典《広辞苑》の説明が引用されている:
“第一に「一緒に生活できない人やなくなった人に強くひかれて、切なく思うこと。また、その心。」”
ここから敷衍して、“恋には、相手と一緒にはなれない悲しさ、せつなさが内在している。異性愛というものには還元しきれない他者への欲望の叶いがたさに気づかせてくれる契機とも、考えることができるのでは、、、”と、やや難解な思想が述べられている。
春は入学シーズンであり、恋のシーズン(?)だから、辞書や恋の記事が似合うのかな。
蛇足:上記「ほん」の自著紹介文に、“使命感だけでは息詰まってしまう”とか、“かれらを卑下するつもりは一切ない”とかの表現がある。当方の国語感覚では、“行き詰って”、“見下す”とするところだ。