昨日の《一般相対性理論 100年・国際光年 2015》講演会では、佐藤勝彦先生
(自然科学研究機構・機構長)が“マルチヴァ―ス”を話題にした。所謂“多
宇宙”、すなわち、この世には我々の宇宙に加えて多くの別の宇宙があると
する理論である。
一口に“多宇宙”と言っても、いろいろの説があるそうで、先生方の提唱したのは、我々の宇宙とは因果関係を失った宇宙が沢山あるとする説らしい。発生源は同じであったが、膨張過程で互いに切り離されたと考えるらしい。
因果関係を持たないとは、相手を観測できないことを意味するから、その存在を検知できないのだそうで、(実験)物理学の対象にはなりにくいという訳で、論文を科学雑誌に投稿する時には、受理されるかどうか心配だったとのことだ。幸い、受理・掲載されて、物理学の理論と認められたのはめでたいことだ。
素人相手の講演だから、厳密さを犠牲にして解り易く話されているのに甘えて、想像するに、物理学の理論も数学的処理で答えが出れば終りと言うのではなく、その答が現実世界でどのような意味を持つのかを考察、説明してこそ、完成したと(社会的に)認められるのだろう。
その他の“多宇宙”論として、我々の宇宙の概念内ではあるが、光学的に観測できない(138億光年以遠)僻遠の世界を取り上げるものがあるらしい。光学的には我々と因果関係の無い存在だが、重力波を介して観測できると考えられるとのことで、上記の多宇宙とは異質である。
因果関係の有無という論点になると、いわゆるブラックホールを想起する。強大な重力源が物質だけでなく光までも呑み込むことで、その存在を直接に観測できないことからブラックホールと呼ばれるのだから、これもある意味で我々と“因果関係を持たない”と言える。ただし、我々の宇宙内の存在だ。
理論の発展は留まるところを知らず、高次元空間におけるブラックホールなるものも研究されているそうで、一説にはヨーロッパの研究機関では四次元のブラックホールの生成に取り組んでいるそうだ。
三次元世界において四次元現象を生起させる事が出来るのだろうか。多分、三次元現象の観測から四次元で起きているであろう現象を推定するものだと思われるが、詳細は不明だ。