小泉保/著「縄文語の発見」(2015/3/6(金))によれば、現代日本語の祖形は「縄文語」にまで遡る事が出来る。その手法は、全国の方言を比較言語学的に考察し、共通ないし類似の語形、発音に着目し、それらの地域分布を勘案して祖先と考えられる言語を描き出すものである。
これは科学的なアプローチであり、大いに説得力がある。カナ表示の発音がにているからという単純な理由で多言語との派生関係を推定する素人言語学と違い、今のところ最も信頼できる日本語起源論ではないだろうか。
尤も、本書の内容は既に二十年程度の時の試練を経ているから、学会での評価も定まっていると思うが、そこまでは確認する余裕が無い。
著者の結論を簡明に図示すると次のようだと言う:
原縄文語から発展した九州縄文語と、それから派生した裏日本縄文語との融合語に、渡来人の中国語的なアクセントが被さって弥生語が出来、関西方言に繋がっている。対する関東方言は、原縄文語の二大分派である裏日本縄文語(東北方言)と表日本縄文語(山陽・東海方言)とが再融合して出来た。
方言間のアクセントの差異に中国語の四声との対応を見出したのが斬新に感じられる。人類学の知見をも加味しての考察により、結論の確からしさが強化されている。
とは言え、結論に適合するような推定あるいは仮説が各所に見受けられることも事実であるので、更なる検証が必要である。今、日本語の歴史はどこまで解明されているのだろう。