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Channel: 愛唱会きらくジャーナル
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冬を待つ城~褐色(かちいろ)(濃紺)~当て推量

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かなり前に予約していた 安部龍太郎「冬を待つ城」(新潮社 2014.10)を漸く図書館から借り、読み始めた。スケール大きく語る歴史小説は面白い。骨格は史実に拠り、肉付けは著者の創造ないし想像で臨場感を演出し、読者を引き込み、先へ先へと読み進ませる。
 
九戸政実の乱という合戦が戦国末期、今から424年前の天正19 (AD1591) 年に奥州の片隅であったとは知らなかった。本書は、東北地方を一気に平定しようとする秀吉に僅かの手兵で立ち向かった一武將の本当の狙いが、東北人を朝鮮出兵に駆り出そうという秀吉方の企みを阻止することにあったとの史観をドラマにしたもののようである。“奥州の片隅”が雄大な歴史の舞台に変身する仕掛けだ。
 
読み始めたばかりだが、話の筋に無関係の一語に衝撃を受けた。

“参賀の席には大紋に烏帽子という正装~~~褐色 ( かちいろ )(濃紺)の装束を~~~”(p.65
今や愛唱会の十八番とも言える森鴎外の詩「沙羅の木」は、次の通り、褐色(かちいろ)で始まる:
              褐色(かちいろ)の根府川石に
白き花はたと落ちたり
ありとしも葉がくれに
見えざりしさらの木の花 
 
“かちいろ”では解らないが、“褐色”の字面から、“かっしょく、茶色”と理解し、人にも物知り顔で説明して来た。褐色 ( かちいろ )(濃紺)が正しいなら、謬説を振り撒いたことになる。早速検索を掛けて、その恐れの通りであることが判明した。
 
かちいろ【褐色】①〔「かついろ」とも〕黒く見えるほど深い藍(あい)色。「勝ち色」に通じるので,武具などを染めるのに用いた。かち。かちんいろ。(大辞林第三版)
 
褐色 かちいろ
染色の名。かちん色ともいう。中世以降、紺色ないし黒みのある藍色(あいいろ)をさす色名として用いられているが、元来、褐(かつ)とは毛織物のことで、褐色(かっしょく)というと薄茶色のことである。
 
かっしょく【褐色】
色名の一つ。JISの色彩規格では「暗い黄赤」としている。一般に、やや黒みを帯びた濃い茶色のこと。「褐色」を「かちいろ」と読む場合は「暗い紫みの青」をさし、別の色を表す。
 
知らない言葉に出会ったら当て推量せず、ひと手間掛けて辞書に当たる(ネット検索する)のが賢明である、と改めて自戒する。
 
付随的に判ったことに、根府川石は“ねぶか‐いし”とも呼ぶそうである。
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