今週の日曜日に当欄で手毬唄「あんたがた何処さ」に触れた(桃栗三年~知らなかった~あんたがた何処さ 2015/1/4(日))。六十年も前の「日本わらべ唄全集」から引用したので、“何処”と漢字で表記されている。
一昨2014.1.7付日経夕刊に、“(にっぽん途中下車)あんたがたどこさ―――洗馬橋電停(熊本県)”と言う見出しで、このわらべ歌が熊本市電の“洗馬橋”停留所で流されていることが記されていた。
歌の中に出てくる“せんば”を“洗馬”と書くとは知らなかった。「日本わらべ唄全集」の解説によれば、“猟師の鉄砲”が“漁師の網”になったりする地方もあるとのことなので、“せんばやま”も“せんばがわ”になれば文章上整合する。
その場合の“せんば”が“洗馬”であれば字面上一層辻褄が合う。馬を洗うのは川岸だろうから。
しかし、一般論として、地名の漢字に意味を置き過ぎるのは勘違いの基だ。元からある地名を表記するのに、その発音に近い漢字を後から充てる場合が少なくないからだ。極端な例は、北海道に多いアイヌ語起源の地名だ。
“せんば”で普通に連想する地名は、“船場”だろう。当方、これを永らく“ふなば”と思い込んでいた。“せんば”と知ったのは、たかだか20年ほど前だ。いわゆる重箱読みだから、耳から入らなければ読めなくて当たり前とは言える。
“せんば”だと知ると、何故このような重箱読みになったのかが気になって仕方が無い。○○場(ば)という形は珍しくない。その○○が単独で使われている場合には、○○場(ば)が不自然には聞こえない。
という訳で、“渡船(とせん) 場”が縮まって“船場”に、、、というのは、素人語源説の最たる例になりかねない。