「世界でもっとも知られた、もっとも見られた、もっとも書かれた、もっとも歌われた、もっともパロディ作品が作られた美術作品」といわれている(ウィキペディア)絵「モナ・リザ」についての面白いエッセー《漱石の見た「モナ・リザ」》(芳賀徹 学士会会報2015-I)を読んだ。
夏目漱石は1900年9月から1903年1月にかけてイギリスに留学した。美術にも関心のあった彼は1902年1月から3月にロンドンの王立美術院で開催された「昔日の巨匠」展ではじめて「モナ・リザ」を見た。その時の印象も踏まえて7年後に短編「モナリサ」を書いた(永日小品 1909)。
漱石がロンドンで見た「モナ・リザ」は、実はダ・ヴィンチの真作(ルーヴル美術館蔵)ではなかったそうだ。目録から、ブラウンロウ伯爵の所蔵品で、“もとレイノルズ所蔵”の模作であると知れるそうだ。レイノルズは王立美術院初代院長だった画家で、その「モナ・リザ」を真作と信じていた。
その後誰もが真作だと信じていたとのことだが、いつ模作と判明したのかはエッセーには書かれていない。書き振りからは、漱石も模作だとは知らなかったように読める。模作とは言え、高度の技量を以って模写されており、保存状態に至っては真作よりも良く、十分鑑賞に堪えるようだ。
ところで、「世界で~もっとも歌われた~美術作品」と言われると、合唱マニアとしては気になって仕方が無い。美術には無関心ではあるが、それらしき歌を一つも知らないのでは落ち着かない。早速ネット検索したところ、幾つかヒットした。偶々昔懐かしいザ・タイガースの名に惹かれて「モナリザの微笑」というのを試聴した。
作詞:橋本淳 作曲:すぎやまこういち
1 雨がしとしと日曜日ぼくはひとりで君の帰りを待っていた壁に飾ったモナリザもなぜか今夜はすてきな笑顔忘れてるどんなに遠く離れていてもぼくはあの娘の心が欲しい
2 涙ぼろぼろ日曜日ぼくは ~
聴いても特段感銘は受けないが、歌い出しのメロディーがロシア民謡「一週間」を転用していると思われた。“日曜日”を引き出すのにピッタリということだろう。
この「一週間」、つい五日前の日曜日、12月28日に、「ロシア・ウクライナの愛唱歌を原語で歌う」らすぺふ講座最終回で歌って来たばかりだ。不思議な御縁だなあ。