「われら愛す」の宝塚レヴューを掲載した帝国劇場発行のプログラム《宝塚歌劇七月雪組公演》(昭和29年)には、2ページにわたる英文の案内がある。米軍の占領統治が7年間続く間にこのような慣例が定着したのか、それとも昔から帝劇は国際的だったのか。
英文案内は雪組公演の2演目“THE JAPAN WE LOVE”(われら愛す)と“HURRAH FOR ALL HUMAN BEINGS!”(人間万歳。こちらが主演目。)を概略紹介するものとなっている。
先ず、主な出演者(Principal Players)深緑夏代、瞳うらら、四条秀子、藤代彩子、新珠三千代、八千草薫、筑紫まり、寿美花代、美吉佐久子、水原節子、瑠璃豊美、登代春枝、など計22名を列記している。日本文では制作スタッフと出演者全員が明記されているところが違う。
日本文の解説によれば、深緑は声楽専科、瞳、四条、藤代はダンス専科、そして我がお馴染みの新珠と八千草は演劇専科などとなっている。生井の著書によれば、深緑は大阪での新国民歌発表会で歌唱指導を担当している。
名簿の次に《 Revue THE JAPAN WE LOVE 8 scenes》として、主なスタッフと“Modern aspect of life in Japan is by no means carefree.~~~”と固い内容の一文が来る。ストリップ、パチンコ、デモ、傷痍軍人、ジャズ狂いの若者、シベリアからの父帰還を待つ子供など、社会問題を抱える日本の現状ではあるが、明るい未来の始まりに望みをかけよう、という意図で制作したと述べている。劇団も娯楽一辺倒ではなく、社会問題に対する意識のもとに興行しているのだとのプライドが伝わる。
なお、この資料を通覧する限り、新珠三千代、八千草薫のご両人は主演目たる《人間万歳》にのみ出演したようだ。