後藤暢子「山田耕筰」(ミネルヴァ書房 2014.8.10)をざっと読んだ。後藤は山田耕筰研究をライフワークとしているようだ。生誕百年特集記事を組んだ「音楽芸術」1986年2月号に《自伝「若き日の狂詩曲」批判》を載せている。
恐らく半世紀にわたって耕筰の事績を丹念に検証してきた成果をまとめた著書だ。当管理人などの知らないことが山盛りなのだが、最も意外なのは、耕筰が美空ひばりのために作曲したという事実だ。
記述によれば、1955年に、「風が泣いている(風のシャンソン)」と「山の小駅」(作詞宮本吉次)の2曲を作曲した。念のためネット検索すると、結構有名な歌らしく、知らなかったのは誰かさんだけということのようだ。
自宅でひばりに歌唱指導した耕筰は、彼女の発声法を危ぶんだという。太い低音の声と、張り詰めた高音の声と、まるで別人のような二様の声をさしている。
もっと自然な発声で歌うようにすすめたということだが、大先生の忠告は容れられなかったようだ。ひばりのひばりたる所以のものを取り去るわけにもいかないだろう。
ひばり没後25年に当たり、没後50年を控える耕筰の作曲したひばりソングを歌ってみようかな。
風が泣いてる日暮れの風があの日別れた人のよに風じゃあるまい ~
君と別れてひとりで帰る暗い路こゝろしみじみ振り返りゃ山の小駅に ~