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詩人のための量子力学⑤~波動関数~点確率

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弦だの振動だのと言われると、誰でも音楽を連想するだろう。「詩人のための量子力学」の著者も例外ではなさそうで、“素晴らしい音楽(つまり、量子論)は、練習さえすれば、古いギター(つまり、波動の形式)でも演奏できるのである”と述べている(p.174)。
 
その前段では、“原子に拘束された電子は、弦楽器の振動モードのような波動関数を持っている。
 
拘束されたどんな粒子も、弦楽器に生じる波のようにふるまい、それぞれに対応するエネルギー準位をもっていて、弦を指で鳴らしたときの音のように、量子化され、許された離散的な値しかとらない。
 
弦理論の弦は、相対論的に強化したギターの弦のようなものだ”とも。
 
これらの比喩が、量子論の理解にどれほど役に立つのか、甚だ疑問だが、量子の世界にも現実マクロの世界と似たような現象を想定できるし、また、それ以外に今のところ、原子レベル以下の極微世界を理解する道は無いということなのだろう。
 
不確定性原理で有名なハイゼンベルク(190176)は、プロ並みのピアニストで、また、花粉症に悩んでいたそうだ。
 
“理論家のなかの理論家”だった彼は、量子論と古典的な物理概念とを調和させるために、「行列代数」という数学を物理学に導入した。複素行列の代数にして、線形代数とも呼ばれるそうだ。
 
“線形”と聞くと単純そうに思いがちだが、実はとても厄介な演算を伴うものらしい。この行列代数の検討から、例の不確定性原理が導かれたという。その後、行列代数よりもイメージし易いシュレーディンガーの方程式が提示され、その解として得られる波動関数から、時空の位置における粒子の存在確率を理解することとなった。
 
このことについて「詩人のための量子力学」では端的に“波動関数の二乗は、時間と空間の任意の点において、粒子を発見する確率である”とマックス・ボルンの提案を紹介している。
 
これは、粒子と波の二概念を密接不可分に一体化するものであった。量子レベルでの観測には確率も基本的な要素であることをも意味する。
 
というように理解したのだが、一つ深刻な悩みがある。“点における確率”とは何か。それが有限な実数で与えられるならば、各点の確率の総和は無限大に発散するではないか。
 
“確率の密度(ないしは濃度)”であればその心配は無い。もともと、そういう意味で“確率”は使われているのだろうか。通俗解説書の字面に頼って議論することの空しさを噛み締めるべきか。
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