ひかりはいつも かはらぬものを
ことさらあきの 月のかげは
などか人に ものを思はする
あゝなく虫も おなじこゝろか
こゑのかなしき
ことさらあきの 月のかげは
などか人に ものを思はする
あゝなく虫も おなじこゝろか
こゑのかなしき
ここに詠まれた虫は、童謡「虫の声」に列挙される“マツムシ、スズムシ、コオロギ、クツワムシ、ウマオイ、”など風雅な世界の虫だろう。しかし、身の回りで目に付きやすいのは、別世界の虫だ。
今朝、上階の若い衆が「虫だ!取ってくれ!」と騒ぐので、行って見ると、クモだった。益虫だから放っておけと言っておいた。実は、この小さな虫、すばしっこくて捕えにくい。乱暴に捕獲すると潰してしまう。扱いにくく、面倒なので今朝は放置したが、自分の部屋で見付けた時は窓の外へ放逐することにしている。
午後、小奇麗な某学食でソバを注文した。カウンターで待ちながら不図、足許を見遣ると、大きなゴキブリがあおむけになって手足をバタつかせていた。断末魔の足掻きらしい。カウンター内のお嬢さんに告げたが、特に驚いたようでも無かった。
帰り道、木蔭を歩いていたら、傍らに何かが落ちてきた。見ると、小さな甲虫で、これも仰向けだが、動く気配は無かった。木の枝で突くとモゾモゾ脚を動かしたが、移動する元気は無い。上方でカラスが頻りに鳴いていたから、食べられ損ねて落ちて来たものかと思われた。
鳴く虫で目にするのはセミぐらいか。夜うるさく合奏する虫たちの姿を見ることは難しいようだ。