訪問コンサート用に、秋の歌を物色したら、沢山あったのは予想通り。これらを9、10、11の各月に割り振ればよい。
歌のテーマとしては“月”も大変多く、これが秋の季語とされているから、“秋の月”に絡む歌が必然的に多くなる。代表格が、文字通り「秋の月」で、詞・曲とも滝廉太郎の作である。
原曲は無伴奏の混声四部合唱で、題は単に「月」であるようだ。組曲《四季》の秋の歌とされている。春の歌は“春のうららの隅田川~”の「花」で、4曲のうち、これが突出して有名だ。
月
ひかりはいつも かはらぬものを
ことさらあきの 月のかげは
などか人に ものを思はする
などかひとに ものを思はする
あゝなくむしも おなじこゝろか
あゝなく虫も おなじこゝろか
こゑのかなしき
ことさらあきの 月のかげは
などか人に ものを思はする
などかひとに ものを思はする
あゝなくむしも おなじこゝろか
あゝなく虫も おなじこゝろか
こゑのかなしき
この歌を覚えたのはかなり前のことで、3・4行目の“ものを思はする”は“物思わする”と歌っていた。実際、そのように表記した資料も有り、プロ歌手の模範歌唱でもそのように歌っているのがある。
ただし、独唱用に編曲しているから、それなりの理由があるのだろう。原譜通りのアカペラ四部合唱例を聴いたら、上記歌詞の通りに歌っていた。
ところで、この歌の出だし部分のメロディーが、スメタナの「モルダウ」に似ているとの見方がある。意識すると確かに似ていると感じられる。滝廉太郎はスメタナの交響詩《わが祖国》から霊感を得たのか。