愛唱会で練習を始めた森鷗外/信時潔「沙羅の木」は、既述(信時潔版「沙羅の木」②~音源CD発見~手書き楽譜の謎 2014/6/21(土) )の通り楽譜が公刊されていないので、演奏するには、私的に信時手書き楽譜のコピーを入手するなど特別の手立てが必要である。
不鮮明な印影なぞり版楽譜のままで公演に臨むのもみじめに思われるので、楽譜原本を所蔵する鷗外記念館に当たってみることにした。いわゆる“だめもと”の気分で、館の受付嬢に「沙羅の木」楽譜のコピーが欲しい旨を伝えると、なんと、ディジタル画像のプリントアウト入手の可能性があるとのサジェスチョンが得られた。
教えられた通り2階の図書室を訪れると、ここでも親切に画像検索端末を操作して、たちどころに目的の画像を表示してくれた。しかし、受付で想像欣喜したように即座にコピーを貰えるわけではなかった。そこはお役所の壁で、申請書を受理して審査の上、結果を約2週間後に通知するという厳重な手続きを経なければならない。コピーの交付を受けられるにしても、高額(と言ってもポケットマネーの範囲内)の料金を支払うことになる。
実際に端末で画像データを見せてもらって初めて判ったのだが、手書き楽譜は2通あるらしい。漫然と見る限り、違いに気付くことは難しいが、データが2件あるとの予備知識をもって繰り返し眺めると、やはり2通あることが判る。便利な複写機の無かった時代、信時は念のため楽譜を2通作成したのだろうか。それとも、実は、2種類作曲したのだろうか。メロディーの比較などまではしなかったので今のところ何とも言えない。
それにしても立派な施設だ。職員は親切だし、空調は完璧だし、真夏の過ごし場所として理想的に思われた。展示物を観覧するには入館料(以前、600円と書いたが、実際は300円だった。何故間違ったのか不思議。)が必要だが、図書室だけの利用ならば無料だ。