先日の北国のコンサートで歌った北原白秋/多田武彦「梅雨の晴れ間」に“まわせ まわせ みずぐるま”が繰り返し出てくる。“みずぐるま”は“水車”で、今では“すいしゃ”と読むのが普通だ。有名な愛唱歌 清水みのる/米山正夫「森の水車(すいしゃ)」は1942年の発表だから、この頃は既に“水車(すいしゃ)”が普通の読みになっていたのだろうか。
尾上柴舟/松島彝「水ぐるま」という歌がある。こちらは読みが示されている。発表は1923年だ。「みずぐるま」が動力として現役だった頃は、歌の材料として人気があったらしく、同名の曲が少なくない。明治から昭和に掛けて満遍無く作られているようだ。
尾上柴舟の「水ぐるま」は次のような歌詞だ:
一 のぼらば瀧につづくらむ 岩切りとほし行く水の
流のきしに小屋見えて あやふくかかる水車。
二 ただかりそめの板ぶきに のせたる石も苔むしぬ
閉さぬ窓より見入るれば 守り居る人はまだ若し
三 ~ 五
作曲の松島彝は、今は“松島つね”と書くようになった。あまり有名ではないが、音楽史上は大変に重要な人物であるようだ。ウィキペディアなどに解説があるが、女性としては日本初の職業的作曲家であったらしい。勝ち気な性格その他の事情で作品が世に知れることが少なかったようだが、童謡「おうま」は、誰でも知っているのではないか。彼女の先の戦争直前の作曲だそうだ。
「あかいとりことり」(北原白秋)にも曲を付けたという。実際、松島の作曲としている音源も公開されている。しかし、成田為三の作曲とされているメロディと同じだ。混同されているようだ。改めて調べてみよう。