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山本義隆「小数と対数の発見」~5桁区切り~黄金律 The Golden Rule

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山本義隆「小数と対数の発見」(日本評論社2018.7)を読んだ。版元による内容紹介は簡単に≪15世紀後半からの《天文学の革新》は同時に《数学の転換》の時代でもあった。その壮大な歴史ドラマをいきいきと描き出す労作≫とある。
 
書評も次のように簡潔:≪週刊読書人20181019日 「自然学が物理学に学問序列が転換する過程の数学史——近代科学誕生の前史、ここに完結」評者:猪野修治氏≫
 
目次を眺めると、60進小数をめぐって、ステヴィンの『十分の一法』、ブリッグスによる素数の対数計算など、興味をそそる。数学史だから、歴史資料を遺漏無く読み込み、しかも数学的解説も欠かせないから、著者の労力、能力は勿論優れていなければならないが、読み手にもそれなりの努力、能力を求める。
 
当方はいずれにも欠けるところがあるから、上っ面を撫でるように通覧しただけである。数式や計算は絵画の如く鑑賞した。著者が対数の実用化、普及における天文学者ケプラーの貢献を高く評価しているのが印象的である。対数と言えば普通はネピアの名を思い出す。
 
実際にはネピアの対数は三角関数を基にしており、ケプラーは所謂常用対数を確立したらしい。
 
小数に関する話も面白い。現今、3.1415… のような小数表記は当たり前であり特に意識することも無いが、これが実は偉大な発明であることが縷々説明されている。現用されているアラビア数字(実はインド起源)も偉大な発明であるが、そこから自動的に小数表記が導かれたわけではない。千年以上にわたる数学者及び計算常習者たちの経験、工夫から生まれたものだという。その大成者がステヴィンと見做される。
 
印象に残ることを2,3記しておこう。先ずは大きな(長い)数の位取り(桁区切り)について。
 
本書p.44 図1.12 ≪ピチクス『数学の至宝 半径1,00000,00000,00000にたいする正弦表』(1613)の扉
p.220 9.1Henry Briggs 1から1000までの対数」(1617)(常用)対数表の1頁≫に、5桁区切り16桁の数表がある。

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桁区切りといえば、昔から3桁か4桁かの問題がある。≪3,451万円≫などという奇妙な区切り方もある。日本人ならば4桁区切りが当然だと思うが、世の中は西洋風3桁区切りの天下である。それを機械的に応用したのが上記奇妙な区切り方である。
 
という具合に、桁区切りは3桁か4桁かで完結かと思っていたのだが、5桁というように他の区切り方もあることを教えられた。確かに、十進法のもとでは、5桁区切りは合理的とも思える。ただ、5桁区分ごとの呼称をどうするかは問題である。適当に考案すればよいことではあるが。
 
区切りと言えば、小数部分にも桁区切りのコンマを記入する記数法があることにも新鮮な感じがした(次項参照)。
 
本書p.224 に≪ブリッグズの言う「黄金律」≫とある。「黄金律」すなわち
The Golden Rule の語は、当欄≪灯台守~The goldenrule~佐々木信綱作詞「助船」 2014/11/27()≫で取り上げたように、唱歌「灯台守」の元歌のタイトルでもある。これも何かの縁、ここに転記しておこう:
 
log(1+ε)=0.55511151231257821.2781914932003235 xε=0.434294481903251804ε,|ε|≪1
 
例えば log1.000,000,000,000,000,01=0.434294481903251804εx10-17
 
この公式により、整数の(常用)対数を順次(加減乗除の四則演算で)計算できるという実用価値の大きさから「黄金律」の称号を得たものである。
 
著者はもと東大全共闘代表という異色の経歴を持つ。今でも革新陣営にあって活動を続けているという。その活力、エネルギーに称賛措く能わず。

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