納得できる譜割りを探り当てたと思っても、楽譜に記録しなかったので、歌うたびに不安はあるのだが、今日は何とか破綻せずに歌い終えた。
ついつい、いい気になって、能書きを並べたくなるのは人情だ。“幻の”とふりかぶった心を少しばかり述べて感心して貰う稚気に我ながら嫌悪を覚えながらも止められない。機会があれば同じように“幻のThe Appple Song”を歌ってみたいと仰る同好の士の存在が背中を押す。
外に、ロシア俗謡“Mетелица(Вдоль по улице)”を披露した。今回のサロンのために新たに仕込んだ言わば新曲だ。日本で歌われているかどうか判らない。英語では“Snow Flurries”と題されている。訳すれば“小雪”となるが、“Mетелица”自体は“snow storm(雪嵐)”あるいは“blizzard(ブリザード)”の意味だそうで、戸惑っている。
歌詞の英訳で
≪"Down the village street, the snow storm swirls and blows,
Through the snow storm there, I see my darling goes.
Stay a while, oh stay, and turn your face to mine.
Let me gaze upon you, and see your beauty shine!"≫
とあるので、今回は「雪とともに去りぬ」と邦題を付けておいた。
余興として、“Ave verum corpus”の二重唱でアルトを歌った。ソプラノ役のF氏との息が合わずトチッたりしたが、心優しい聴衆は褒めてくれた。人前で歌う緊張感を持たねばならないと反省するのも毎度になると信用が置けない。
サロン終盤になってヴァイオリニストのM嬢が突然現れ、プロ級の演奏を聴かせ、本日の最優秀賞を攫って去った。入退室のご挨拶も無い独特のキャラクターに首を傾げる方々もいるが、彼女の腕前には皆さん称賛を惜しまない。