昨10日、掛り付けの図書館から永嶺重敏『「リンゴの唄」の真実 戦後初めての流行歌を追う』(青弓社2018.10.10)の用意が出来たと連絡があり、早速借りて読んだ。発行のちょうどひと月後という切りの良いタイミングで、しかも異例の早さで読めたのは幸運である。
懐メロの定番「リンゴの唄」の誕生から流行の過程や、これを持ち歌とした並木路子の姿を要領よく紹介しており、当方など施設訪問コンサートに携わる者にとっては有難い本だ。単に公知の事実、情報をまとめただけでなく、通説の誤りを糺すなど独自の調査成果を盛り込んでおり、大いに参考になる。
内容の要点ではないが、2,3メモしておこう。
並木路子と共に映画「そよかぜ」に出演した高倉彰の名が挙がっている。彼は、歌曲「初恋」(詩石川啄木)の作曲者として名を残した越谷達之助だ。戦中から戦後に掛けて俳優業も兼ねていた。著者・永嶺氏はそのことに触れていない。
一方、並木と同じステージ(音楽番組)に出演したミュージシャン森山久については、森山良子の父親であると述べている。越谷達之助よりも森山良子の方が知名度が高いことの現れだろうが、啄木贔屓の当方には些か片手落ちと感じられる。
映画「そよかぜ」とその主題歌(あるいは挿入歌)「リンゴの唄」の世に出たのが1945年10月11日で、以後1,2年の間この歌が大流行することになるが、同時代によく歌われたひと時代前の歌として「カロリナの月」というのが記されている。
初めて目にする題名である。本書の文脈から連想されるのは「コロラドの月」である。「カロリナ」と「コロラド」は語感が似通っている。英語の綴りは Carolina と Corolado で、当然類似している。
「コロラドの月」は原題Moonlight on the Colorado として知られている。「カロリナの月」はネット検索で全くヒットしない。謎だ。
やはり同時代の歌として挙げられていて興味を惹くのは、「天気予報」とサトウハチロー/佐々木すぐる「ころころどんぐり」である。後者については同コンビによる「どんぐりころころ」がサイト d-score に見える。